約 3,045,898 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/810.html
マリー・ド・ラ・リュヌ、と彼女は頑なにそう名乗る。 フランス語の名前を持つ彼女の容姿は、やはりというかなんというか、フランス人形に似ている。 いつも右手には日傘を欠かさず、この間着せてあげた夏用のドレスにはリボンとフリルが惜しみなくあしらわれていた。もちろん、そのドレスは彼女が選んだものだ。もし私がこんなのを着たら家中の大笑いになるに違いない。 言葉遣いは、最初のころは普通だったものの、気づいたらいつの間にかニセお嬢様口調になっていた。これはこれで面白いけど、明らかに私の愚兄の仕業だ。まあ、お兄ちゃんは彼女にとってもう一人のオーナーなのだから仕方ないかもしれないけれど。 ああ、フランス人形に似てると言ったけれども、実は彼女はそんなに可愛いものじゃない。いや、可愛いんだけど、そんなに単純じゃない。 マリー・フォン・ディー・モンディン(Marie von die Mondin)、マリーア・デッラ・ルーナ(Maria della luna)、マリア・ルナエ(Maria lunae)、マリール・キアソル・クアソル(Marír ciasol cuasol)、月夜(つくや)のマリア...戦ってきた人の数だけ彼女には名前がある。というか私がマリアと彼女のことを呼ぶと、他の人は勝手に余分なものまで付けて彼女をそう呼ぶ。本当は全部同じ意味なんだけど。 それでも彼女は頑なにこう名乗る。 マリー・ド・ラ・リュヌ(Marie de la lune)。 私がそう呼んだから。彼女がそう望んだから。 今日も日傘を模ったウェポンで戦う彼女は、"人形型MMSノートルダム"の武装神姫。 そして彼女のオーナーである私の名前は、月夜のどか。ただの高校一年生です。 マリーとの出会いの日、六月十日。 「へえ、藤井も神姫買ったのか。いいなあ、金持ちは!」 「バーカ。お年玉とバイト代全部つぎ込んだに決まってるだろ」 放課後、帰り支度をしていると、帰宅部の藤井君とブラスバンド部でサックスを担当している豊田君の会話が聞こえた。普段なら聞き流してしまうような全く普通の会話なんだろうけど、そのときの私はどうも「神姫」という言葉に敏感だったらしい。 というのも、最近、大学院生のお兄ちゃんが神姫にどっぷりと浸かっていたからだ。前々から流行っているということは知っていたし、剣道部の先輩や友達でも持っている人はけっこういる。ただ私のお兄ちゃんがはまってしまうとは思ってなかった。 だってあの人が興味あることと言ったら、オカルト――それこそUFOから幽霊まで――と語学しかなかったのに、それが急に神姫でバトルの毎日。引きこもりがちだった兄が、外に出るようになったのは妹として嬉しいけれど、どこか変な感じ。 うん。まあ、簡単に言えば、私もかなり神姫に興味が湧いてきたわけだ。 というわけで、今日は部活をサボって家に帰り、お兄ちゃんの部屋に直行する。 「お前さ、思春期だろ?青春時代の真っ只中だろ?部活行けよ、友達とカラオケ行って来いよ、親父と兄貴を避けろよ」 「えー?だって稽古はどうせ家でもやるし、カラオケなら先週行ったし、パパもお兄ちゃんも師範代だから一応尊敬しなきゃだめでしょ?」 お兄ちゃんは机で何か作業をしながら私をテキトウにあしらった。 私はお兄ちゃんの後ろから覗き込む。 「暗い」 確かに私が後ろに立ったせいで、机にはほんの少し影が映った。ライトスタンドの角度を少し変えてあげる。 「ねえねえ、お兄ちゃんの神姫見せてよ」 「うーん?ちょっと待て」 それからかちゃかちゃと忙しくドライバや名前も知らない工具を二分くらい動かした後、お兄ちゃんは机の上の、丸いお皿の中で眠っていた神姫に呼びかけた。 「おはよう(ドーブラヤウートラ)、アーニャ」 紫色のボディの神姫はゆっくりと目を開ける。ペイントこそされているものの、この神姫――アーニャはアーンヴァルのようだ。いや、ただのカタログ知識だけど。 「おはようございます、時裕さん、のどかさん」 私はアーニャに会うのは久しぶりだけれど、彼女はちゃんと私のことを覚えていてくれた。相手が電子の頭脳を持つロボットだとわかっていても、少し嬉しい。 アーニャはクレードルから降りて、お兄ちゃんの右手のほうにあるノートパソコンに登った。そこから机の反対方向、つまり私たちから見て左を眺めて言った。 「時裕さん、あの箱はもしかして」 アーニャが指差したほう、ライトスタンドの真下に確かに箱があった。 「ああ、神姫だよ。素体が安かったから。アーニャの妹にしようと思って」 「まあ、本当ですか?嬉しいですわ、ありがとうございます。私、丁度妹が欲しいと思っていたところですわ」 変なお世辞は致し方ない。彼女が喜んでいるのは事実だ。それよりも、それを見てさらに喜ぶお兄ちゃんもちょっとアレだと思う。 私はそっと、箱に手を伸ばした。 お兄ちゃんの言葉一つ一つにアーニャは丁寧な相槌と素晴らしい表情を返し続ける。それでお兄ちゃんはもっと喜ぶ。 見事な平和サイクルだ。 「タッグマッチとかも楽しそうだしね」 「そうですね、きっと楽しいですわ。でもよろしいのですか?のどかさんが組み立てていらっしゃいますけど」 おっと、お兄ちゃんはアーニャとの会話で彼女のほうを向いていると思ってたけれど、こんなに早く見つかるとは、アーニャもちょっと余計なことを言ったなあ。悪気は無かったのだろうけど。 「の、のどか!勝手に何やってるんだ!」 「へへ、結構組み立てるの簡単だね、神姫って」 カチリ、と素体の胸に、てきとうに選んだCSCを埋め込む。 私が右のほうを向くと、呆気に取られて口が開いたお兄ちゃんの顔と、嬉々として希望に満ちたアーニャの顔が芸術的なコントラストを形成して私と私の手の中の神姫に向けられた。 ちょっと前のアーニャと同じように、私の手の中の小さな女の娘は、ゆっくりと瞼を上げていく。 そして私を見据えて言う。 「オーナーのお名前は?」 正確に言えばその一言ではなく、その言葉の前と後にも声は続いていて、どうやらいろんな言語で同じ内容を尋ねているようだった。 私が答えられずにいると、我に返ったお兄ちゃんは急いで「トキヒロ・ツクヤ」と叫んだ。けれど彼女は私を見据えたまま反応しない。その様子を見てお兄ちゃんはとうとう声も出なくなり、半ば諦めたような表情になってしまった。 「...ノドカ・ツクヤ」 ゆっくりと、私は外国人に自己紹介するように自分の名前を発音した。 「ノドカ・ツクヤ。では私のマスター・ノドカ、私の名前は?」 「マリー!」 今度は即答した。マリーという名前は代々私が小さいころから猫やフェレット、大切なものに付けてきた名前だったからだ。 私はもう一度お兄ちゃんのほうを向いて笑う。 「ちょっと早い誕生日プレゼントをありがとう、時裕お兄様」 「お前...」 お兄ちゃんはまだ言葉が出ないようだった。それもそうだろう。だって妹に神姫を強奪されたんだから。 作品トップ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/854.html
デモンストレーション 「なんだ!一体何が起こっている?」 マスターが狼狽した声を上げる オンラインでフリーのバトルロイヤルに参加した私、騎士型MMSフランとそのマスター 一体だけメーカー登録の神姫があったので、新装備のテストでもするのかと思い、興味本位で参加してみたのだ 開始から一分、20体いた神姫は既に半分になっていた その全てを倒したのが例のメーカー神姫であった その一分も殆ど移動時間でしかなく、出会った相手は瞬殺されている 「一体どんな神姫なんでしょう?」 「さあな。とりあえず見てみるか。どんな化け物が出てくるやら」 こうしている間も、どんどん光点が消え、神姫が倒されている事が解る 私はマスターの指示を受け、その神姫の行く先へと向かった 「…なんだこれは…」 その神姫はハウリン型だった 標準らしいバイザーとレッグパーツを付け、手には長剣を一本持っている それだけならどこにでもいるハウリン型である しかしその背中から生えているモノが… 「触手、だな…」 「触手、ですね…」 背中から太い触手が二本、細いのが無数に生えていた 細い触手のうち四本にはビームガンとレーザーカッターが二つづつ装備されているようだ そしてその神姫は今、ストラーフ型を捕らえていた 無数の触手に絡め取られ、身動きが取れないようだ ストラーフ型の特徴ともいえるサブアームとレッグパーツは既に失われている 「はうっ!ぐうぅ…」 締め上げられて苦悶の表情を浮かべているストラーフ 既に勝敗は決しているのに、なぜトドメを刺さないのか…? …いや、ハウリンの注意は既に別に向いている バシュバシュッ 触手が持っているビームガンがあらぬ方向へとビームを放つ 「ぐあっ!」 「きゃっ!」 コッソリと近づいていた神姫が倒れる 「…あとは貴方だけ」 私の方を向き、ボソッと呟くハウリン 「まだ貴方が抱えてるストラーフも居ますよ」 彼女に締め上げられ、息も絶え絶えだがまだデッド判定が出ていないストラーフを指す 「…忘れてた」 ザシュ! 「ぐふっ!」 レーザーカッターでトドメを刺す 「…ごめんなさい、忘れてて」 消えゆくストラーフへと謝罪する彼女 そして、全ての触手がこちらへと向けられる それを見て、剣を構える お互いに睨み合ったまま動かない …いや、動けない私を彼女はただ見ている 攻める隙を見つけられず動けない私と、どこを攻めるか考えている彼女 シュル… 触手が不気味に蠢く 「ひっ…」 その動きに嫌悪感を抱き、一瞬怯む タン! 彼女が地を蹴り迫る 上段に構えた剣を振り下ろす ガキィン! コヌルで弾き返す ヒュン! 触手がレーザーカッターで斬りかかってくる キィン!キィン! これも弾く マスターがコヌルにビームコーティングを施してくれたおかげで難無く防げる とはいえ、手数が3対1では防ぐのがやっとだ 何かいい手は無いものか…と考えていると シュルリ… 「しまった!」 太い触手の一本が私の足へと絡みつく ぐんと引っ張られる 「うわっ!」 さっきの細いのとは桁違いな力で私を空中へと持ち上げる なんてパワーだ。フル装備の私を軽々と持ち上げるなんて そしてさらに細い触手も絡みついてきて、手足の自由を奪う 「くそっ…はなせっ…」 身動きの取れない私にレーザーカッターとビームガンが迫る さっきのストラーフの様に武装を奪うつもりか… 剣は…まだ握ってる こうなったら一か八かアレしかないか 私の右腕を切り落とそうとレーザーカッターが迫る 今だ! 「キャストオフ!」 装備していた青い鎧をパージする それは爆散しながら触手を引きちぎり、彼女へと降り注ぐ 自由になった私は剣を構え、彼女へと斬りかかる しかしこの奇襲に対し、彼女は極めて冷静だった 致命傷と成り得る破片だけを確実に弾き、私の攻撃に備え既に迎え撃つ体勢を取っていた ガキッ! 私の渾身の一撃は止められた ザシュッ! 「ぐふっ…」 そして腹部に生き残った触手が構えたレーザーカッターが刺さる 「…奇策だけでは、駄目」 彼女が投げかけた言葉を聞きながら私は消えていった 「何なんだ、あの化け物は!」 バトル終了後、マスターが叫ぶ バトルロイヤルを全ての神姫を倒してクリアした事はまさに化け物といったところか 触手の強さもさることながら、神姫自身の強さも半端じゃなかった もしテストじゃ無かったなら、私も瞬殺されていただろう 「しかし、あの触手が今回の実験なのでしょうか?」 「だろうな。カッターとビームガンは既に発売されている物だしな。しかし、イロモノかと思った触手があんなに強いとはな」 思い出しただけでもゾっとする 「もし私の鎧にキャストオフ機能が無かったら…」 「最後の一人だったからな。もしかしたら中継が切られるような事になったかもしれないぞ」 「ちょ…マスター!何を考えているのですか!」 「うわっ…冗談だ冗談!」 「ホントですか?」 「ホントホント。まぁ掴まってるお前を見てちょっぴり興奮したが」 かあぁっ! 「マスター!忘れて下さい!」 ごすっ! 恥ずかしさのあまり、私はうっかりマスターの頭をコヌルの鞘で殴打してしまった
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2666.html
如何に海千山千の猛者(変態)揃いの武装紳士淑女であっても武装神姫から離れた日常と言うものはある。 黒野白太も例外ではなく彼から武装神姫を切り離せば関東地方の○県×市にある中学校に通う一中学年生だ。不登校でもなく授業は真面目に取り組んでおり総合成績は上の下、身体も障害も持病も無い良好な状態を維持している。苛めに遭っているわけでもなく、かと言って過剰に頼られているわけでもない、月並みに綺麗な学生生活。 そんな黒野白太に唯一の悩みは中学三年生にもなるのだからそろそろガールフレンドが欲しい、そのくらいだ。凄腕の神姫マスターともなれば女性の神姫マスターの交流もあるが、所詮それは神姫バトルがパイプになって繋がっている関係であり、どんな武器が強いだとか、この神姫にはどの武装が相性がいいだとか、強くなる秘訣だとか、そんな話ばかりで色恋沙汰とは程遠い。付き合うのであれば武装神姫に対しての理解があり出来れば年上の女性である事が黒野白太の願望である。 閑話休題、兎にも角にも到って健全な中学生生活を送っている黒野白太は普段通りその日の授業内容を消化して、放課後最前のホームルームを終えると直ぐに筆箱とノートと教科書を取り出してその日の予習と復習を始めた。放課後に予習と復習を終わらせるのが黒野白太の日課である。それから三十分程すると教室には黒野白太だけになり、一時間程すると日が暮れ始め、二時間程すると黒野白太は予習と復習を終わらせて学校を出た。 神姫バトルの大会がある日などには学校にも神姫を連れていきそのまま神姫センターに向かうのだが、此の日は何も無く、そも学校に神姫を持ちこむ事は禁止されており教師に見つかってしまえば取り上げられてしまうので連れて来なかった。そういうわけで黒野白太は唯の中学生として帰路に着き学校から出て自転車を漕いでマンションに辿り着く。正面入り口から見て右側、駐車場とは建物を挟んで反対側に在る駐輪場に自転車を止めて階段を上り鍵を使って玄関の扉を開けた。 「ただいまー。」 住人の迎えの言葉は帰って来ない、ラノベによくある理由で黒野白太は一人暮らしをしているのだから。と言っても神姫は一人と呼べるのか微妙なので一人暮らしと表現したが彼の神姫であるストラーフMk2型神姫イシュタルもいる。廊下の奥から漂ってくる胃袋を刺激する香ばしい匂いがイシュタルの居場所を教えてくれた。その通りイシュタルは台所に居てリアパーツの副腕と自身のもの計四本の腕で御玉杓子を持ち汁物が入った鍋を混ぜていた。 元々ストラーフ型が重装甲で神姫バトルに出るように造られている所為か自分よりも大きな御玉杓子を苦も見せず操っている。予定の無い平日の食事はイシュタルが作る、これは数年前からで黒野白太にとっては別に珍しい風景でも無かった。機械である神姫の記憶はデジタルだ、神姫であるイシュタルは冷蔵庫の中身と食事から採れる栄養バランスを記憶して調理する事が出来る。尤も神姫は栄養を第一にする上に味覚が無いのでのでそのまま調理すれば不味い料理が出てくるのだが、その辺りは黒野白太の干渉で解消していた。 「ただいま。」 「おかえり。夕食はもう少しで出来るから待っていてくれ。」 「分かった。」 黒野白太は台所を出て近くの自室で分厚い手掛け鞄を下ろし明日の授業の時間割を思い出しながら教科書やノートや参考書を入れ替える。明日の授業と鞄の中身を一致させるとパソコンを起動させ神姫ネットや知り合いの神姫マスターからの連絡の有無を確かめる。それが無いと知るとパソコンの電源を落とし外出用のお洒落な肩掛け鞄に財布や神姫の武装を入れて外出の準備をする。準備も終えて「さて次は何をしよう。」と少し悩み神姫の情報雑誌に手を出した所で台所からイシュタルが自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。 台所に戻ると調理は済んでいてイシュタルは食器を運んでいたので黒野白太は食器を受け取って盛り付けてテーブルにまで運ぶ。最後に紙パックの牛乳をコップに注ぐと何かを思い出したかのように黒野白太はテレビのリモコンに手を伸ばしてテレビの電源を点けた。ニュース番組がやっていたのでそこから流れてくる情報を頭に留めておく程度に聞き流しにしつつ最近になって食卓(戦場)を共にする事になった新入りである真っ黒な箸に手を付けた。 「いただきます。」 両手を合わせて目を瞑る、神姫以外に誰も居ないのにそんな事をするのは長年に渡って染み付いた癖のようなものだ。黒野白太が夕食を食べている間、イシュタルはする事が無いので今日の新聞を足場にして新聞を読んでいる。それも何時もの事であるが黒野白太は何気ない拍子でイシュタルを見てしまい、イシュタルも同様の理由で黒野白太を見た。目が合ってから少しの時間が経っても黒野白太は見つめたままなのでイシュタルもまた動けないので時間が止まってしまったかのような錯覚がする。 「…。」 「何だ?」 「これ、美味しいね。」 「どういたしまして。」 そして時は動きだし黒野白太は夕食に向き直ってイシュタルは読み掛けていた新聞の政治経済の記述を読み直す。神姫バトルだけではなく日常生活においても黒野白太は思いつきで行動する。が、無視すると拗ねるので適当にあしらうのが正解であるとイシュタルは分かっているからだ。それ以降は黒野白太は無意味な言動もせず数十分ほどして夕食を食べ切り最後に自己流(アウトロー)の〆として牛乳を飲み干すと箸を置いて両手を合わせて目を瞑る。 「御馳走様でした。」 「御粗末様。」 黒野白太は食器を流し台にまで運んでからタワシを手に取り洗剤を塗り込んでわしゃわしゃと食器を洗い始める。洗い終えるとよく振って水気を切りタオルで完全に水気を拭き取ってから積み重ねていき、洗う食器が無くなると食器を食器棚に戻す。その後で調理に使った鍋なんかも洗って拭いて、それが終わった頃にはイシュタルは新聞を読み終えて黒野白田の部屋に向かっていた。 一方の黒野白太はタオルで手を拭いハンカチで口元を拭い壁に掛けた鏡で髪を梳いており、それが終えると殆ど同時にイシュタルは黒野白太の部屋から外出用の肩掛け鞄を台所にまで持って着ていた。黒野白太がそれを受け取ると肩掛け鞄を渡したイシュタルは鞄の中に飛び込んで僅かな隙間からひょっこりと顔を出した。 「さて。じゃあ行くか。」 テレビを消し部屋の電灯を全て消しマンションの玄関に出ると鍵を掛けて階段を下り自転車小屋へと向かう。自転車に乗ってから寄り道をする事も無く神姫センターにまで着いて自転車置き場に自転車を置いて自動ドアを潜る。自動ドアを潜った頃にはイシュタルは勝手に肩掛け鞄から出て一跳びで黒野白太の左肩(彼女の指定席)にまで跳び乗って腰を下ろした。 センターに入り神姫バトルの筺体使用の受付を済ませた黒野白太がきょろきょろと対戦相手を探し始めるとセンターに充満していた熱気が僅かに白んだ。その原因が黒野白太である事は黒野白太自身が誰よりも理解している。モブキャラの誰か「『刃毀れ』だ…。」と漏らしてしまった。実力が知られる有名人が神姫センターに姿を現せればセンターに波紋が起こるのは無理もないが黒野白太の場合はちょっと訳が違う。 プロレスや芸能人には所謂『ヒール』が存在する、反則行為を行ったり悪口を言ったりする事で大衆に自分のキャラクターを確立させる役者である。それは神姫バトルにおいても存在し黒野白太は『武器を失った神姫を一方的に嬲る事が大好きな』ヒールとして知らされていた。そんな人物が神姫センターに来られれば他の利用者がどう思うか太陽が沈むより真っ暗な気分になるのは明確である。 利用者の中には中2病真っ盛りな輩も居て口には出さずとも出ていくとメルヘンな事を考えているのか視線で黒野白太の退場を訴えている。これについては黒野白太も反省している、四年前に若気の至りで『刃毀れ』のキャラクターを提案してきた記者にOKを出した自分を殴りたいとすら思っている。何故なら自分が使っている神姫が悪魔型神姫ストラーフ型だったものだから余計にストラーフ型=悪役のイメージが強調されたからだ。 褐色萌えである黒野白太にとって愛するストラーフMk2型に勝手なイメージを付けてしまったのは心苦しいものがあった。渾名の害はそれだけでなく、名が知れてインターネットや情報雑誌と言った玉石混淆な魔界に名が広がって言った為に所為で黒野白太=『刃毀れ』という阿呆な図式を組み立てる輩が出始めたからである。 「黒野白太、いえ、『刃毀れ』ですね。君に神姫バトルを申し込みます。」 「いいえよ。」 「いいえよ?」 「『正直嫌だけど断る理由も無いし別にいいよ。』の略。」 「いつまでその余裕が持ちますかね。今日は君に勝つ為にとっておきの武装を用意したのです!」 例えばたった今黒野白太に神姫バトルを申し込んでおきながらも何故か少年漫画だと失敗するフラグを立てたモブキャラのような。 …。 …。 …。 『やっぱりとは思ってたけどあいつ馬鹿だ。』 神姫バトル開始から数分後 銃撃戦になりハンドガンで牽制を入れつつバトルフィールドに設置されている障害物を盾に黒野白太は呟いた。相手は大剣や爆弾と言った壊れ難いか壊されない武器で固めている、がその装備は偏っておりアーンヴァルMk2型神姫の特性を殺しているとしか思えない。差し詰め武器を壊す『刃毀れ』に勝つには壊れない武器を持っていけばいいとモブキャラは判断したのだと黒野白太は推測する。 別に彼は武器の破壊に執念を燃やしているのではなく相手の心を折る手段として武器の破壊を選んだだけだ。武器が壊せないのであれば装甲を一枚一枚剥ぎ取るだけである。相手に言い訳のしようがない敗北を与えてやる為に情け容赦無い凌辱をしてやろうとグレネードランチャーに手を掛けたがイシュタルに止められる。 『ランチャーを放つのはちょっと待ってくれないか。』 『うん、何で?』 『確かに相手のマスターはどうしようもない阿呆かもしれないがそれに巻き込まれた神姫が哀れだ。』 『そりゃそうだけどさ。でも神姫バトルに参加した以上は一蓮托生でしょ。』 『だが無駄な犠牲者が出るのも好ましくないだろう。』 『神姫を傷付けずあのモブキャラの心だけを折る方法があるの?』 『あると言ったら?』 『いいね、やってみてよ。』 その言葉を合図に黒野白太は機体の支配権を全てイシュタルに譲るとイシュタルは身に纏っていた装甲を全て脱ぎ捨てる。装甲だけでなく武器も捨ててストラーフMk2型のリアパーツに収納されている大剣のみを手に取った。段々とイシュタルが何を思い付いたのかを理解し始めた黒野白太はイシュタルのマスターとして彼女の成功を祈りフラグぐらい立てて置く。 『そんな装備で大丈夫か?』 『造作も無い。』 マスターの気遣い(死亡フラグ)を叩き折ったイシュタルはモブキャラからの銃撃が止んだ瞬間を見計らって物陰から出た。 「なっ、何で武装を捨ててるんですか!?」 「分からないのか? お前如きを倒すのにこれで充分と云う事だ。」 大剣の切っ先を向けながらも凛と響いたイシュタルの挑発にモブキャラはまんまと乗せられて手榴弾を乱暴に投げた。弧を描いた手榴弾がイシュタルを目前に落ちて爆発する瞬間に駈け出して爆風を背後に走り出す。相手の武器が大剣のみならば近付かせまいとモブキャラは手榴弾で粉砕しようと目論むが唯単に単調過ぎた。 モブキャラが手榴弾を握った瞬間にはイシュタルは爆弾が何処に来るかを確定させ投げられた瞬間にその場から離れて回避する。全神姫中でも鈍足な位のストラーフMk2型でも何処で爆発しどの程度巻き込むかが分かっているのであれば避ける事は難しくない。戦場のパイナップルを三つ避けて二人の距離が当初の半分を切ったところでモブキャラはハンドガンを取り出した。 黒野白太はちょっとモブキャラに感心しつつもイシュタルには何も言わず傍観に徹している。銃口が向けられるのと同時にイシュタルは走りながら左に跳び数コンマ遅れて弾丸がイシュタルが元居た場所を通り抜けた。焦り始めたモブキャラが持つハンドガンの銃口がふらつき始めジグザグに動いているだけのイシュタルに正確な狙いが付けられない。 一発二発三発四発五発と全て気泡に終わり大剣を持ったイシュタルが目前にまで迫ったところでモブキャラはハンドガンを投げ捨てた。近接武器なら外さないと大剣を持つが 振り下ろされた刃が届くよりも遙か速くイシュタルの大剣が装甲の隙間を縫ってモブキャラの心臓(コア)を突き貫いた。信じられないとありありと伝わる表情で崩れ落ちるモブキャラを抱き止める事も無くイシュタルは大剣を抜く。 「勝者(ウィナー)・イシュタル。」 静かにも美しく神姫バトルに黒幕を降ろした一人の神姫に、唯一の観客である黒野白太が惜しみの無い拍手を送った。 …。 …。 …。 「何で…何で僕が負けたんだ…あんな相手に…。」 悔しがっているモブキャラに色々と傷口に塗りつけたい黒野白太であったが今この場はイシュタルに任せようと決めつけていた。それに気付いているのかイシュタルは指示されたわけでもなく筐体の上で仁王立ちをしてモブキャラを睨みつけている。この後に怒り狂ったモブキャラがイシュタルに掴み掛かっても直ぐに殴り飛ばせるように黒野白太も前に出ていた。 「君が負けた理由? 簡単だ、君が馬鹿だからだ。」 人を傷付ける言葉の代表格を言われモブキャラはコロっと悔しがるのを止めてイシュタルを睨み返す。その手の中でアーンヴァルMk2が自分のマスターに冷静になるように努めているがその効果が出る様子は無さそうだ。イシュタルは自分よりもはるかに巨大な存在の憤怒の形相に、元々神姫には恐怖は無いのだが、恐れる様子も無く凛として続ける。 「途中で使ったハンドガン、恐らくそこのアーンヴァル型に勧められて入れたのだろう?」 「…そうですけど、それがどうしたって言うんですか。」 「まだ分からないのか。 そこのアーンヴァル型の方が君を勝たせる為に何をしていたのかを。」 「ど、どういう事だ!?」 最後の言葉はアーンヴァルMk2に向けられたもので手の中の神姫は申し訳無さそうに表情を曇らせる。 「そこのアーンヴァル型は何も言わなくていい。あたしが全て言う。おかしいと思ったんだ、総じて学習意欲が高い機体が多いアーンヴァル型が何故あんな馬鹿げた装備をしているのかとな。答えは『オーナーである君が神姫の話を全く聞かなかった』から。勝つ為の努力を怠らなかった神姫の言葉を君は全て無視したからだ。『刃毀れ』は所詮は私達の戦法の一つに過ぎない。通じないと分かれば捨てる。そこのアーンヴァル型はそれを知っていたからハンドガンを持たせたんだ。」 少し神姫ネットで調べれば分かる事で確かに黒野白太が武器を壊した回数はズバ抜けている数字であるものの神姫バトルをした総合に比べ武器を壊した回数は約三分の一程である。黒野白太にとって武器を壊す戦法とは対戦相手の心を折る戦法の一つに過ぎない。それをアーンヴァルMk2は知っていたのだろう、だがそのオーナーであるモブキャラは自分の神姫を無視して自分勝手(エゴ)を突き進んだ。 オーナーの自分勝手(エゴ)に所詮は神姫であるアーンヴァルMk2型が強く出られる筈がない、神姫はどれだけ経験を積んでも奴隷の域を超える事は無く神姫にとってオーナーの命令はC・S・Cに等しく反対も反抗も反逆も出来ないようになっているのだから。勝とうと願ったアンヴァルMk2の精一杯の忠告を無視し努力を無駄にした、それこそがモブキャラが敗北した原因である。 「理解出来たか。それが神姫バトルだ。」 最後にイシュタルは冷たく言い放って筺体を降り黒野白太の左肩に飛び乗って腰を下ろす。意気消沈としているモブキャラを励ますアーンヴァルMk2型にイシュタルに全てを任せると決め付けたはずの黒野白太は声を懸けた。 「僕について調べてくれた君に僕達の秘密を教えてあげる。僕が『刃毀れ』と呼ばれるようになったのは四年前の事だ。」 何を言っているのか理解できずキョトンと首を傾げたアーンヴァルMk2であったが直ぐにその意味を理解してその青い瞳に驚愕の色が映えた。 「四年前は神姫ライドシステムなんて無かった。僕は外野から武器を壊せって指示を出しただけ。実際にそれをやってた奴は…。」 「おい、マスター。敗者に何を言っているんだ。勝者は次の戦いに備えるべきだろう。」 「はいはい。んじゃあ、またね~。」 覇気を込めて軽口を抑えつけるようなイシュタルの言葉に背中を押されて黒野白太はその場を後にした。 「そう言えばあのモブキャラの名前、何だったっけ?」 「さぁな。覚えるだけメモリの無駄だ。」 「酷いな。多分向こうの方が年上だと思うよ?」 「神姫バトルに年齢は関係無いだろう。居るのは勝者と敗者のみ。…そうだな、次に戦った時に私達に全力を出させるようなら覚えておこう。」 「それがいいね。」 筺体を後続の神姫プレイヤーに譲ってそんな雑談をしながらも対戦相手を探している二人に男が近付いてきた。身長が百七十センチ程の男は傍らにアーク型神姫とイーダ型神姫を待機させてイーダ型の方は敵意を剥き出しにしている。 「よう、今の見てたぜ『刃毀れ』。」 「やめろ。有象無象なら兎も角、友達にその渾名で呼ばれるのは恥ずかしい。」 「御久し振り。相変わらず神姫を舐めたような戦い方をしていますわね、イシュタル。」 「久し振りに会ったってのに直ぐに喧嘩売るのは止めなよ、バアル。」 「バッカスは気にしなくていい。バアルの言う通り私は相手を侮って戦っていた。」 敵意を留めようとしないイーダ型神姫バアルに気苦労するアーク型神姫バッカスを気にする事も無く赤見青貴は僅かな笑みを黒野白太に見せた。 「いや、珍しいものを見たもんだ。お前が相手を立てるような真似をするとはな。」 「やったのは僕じゃない、イシュタルだよ。初めは僕も普段通り(心を折ろうと)しようと思ってたから。」 「マジか。やっぱスゲェなイシュタルは。」 「他ならぬマスターが他人の神姫を褒めてどうすると言うのです!」 「マスター、頼むからバアルを怒らせないでくれ。私の胃がストレスでマッハだ。」 「あ、悪い。」 ようやく敵意三割増しのバアルを宥めているバッカスに気を留めた赤見青貴軽い謝罪の言葉を口にした。 「珍しいものを見た、僕もその言葉を返すよ。赤見、柔道はどうしたんだ?」 「もう高校受験が迫ってるから辞めさせられたよ。で、今日はようやく母さんの許可を貰って息抜きに来たわけ。」 「そう言えば赤見は他県に行くんだったね。成程、分かったよ。」 「お前は? まぁ、お前がやることと言ったら神姫バトルしかないか。で、今日はまだバトルするんだろ?」 「まぁね。どう? 久し振りにやらない?」 「やだよ。お前に負けたらしばらく立ち直れなくなるだろ。」 「何を弱気になっているのですかマスター! ここで会ったが百年目、ケチョンケチョンにして差し上げますわ!」 「バアル、それ負けフラグだから」 「お前最後に戦った時、武器どころか装甲も壊されて思いっきり泣いてたじゃねえか。」 それでも降参だけは断固として拒否したあの時のバアルの勝利への執念だけは黒野白太とイシュタルは評価していた。 「そうか。折角、旧交を温めようかと思ったのに、残念だ。」 「『刃毀れ』が言うとその台詞も嗜虐心が食み出して見えるよな。」 「だから渾名で呼ぶのは止めろ。」 「あ、そうそう。紫原と緑間…後、金子さんは、ここに来ているのか?」 黒野白太との共通の友人で神姫マスターだったが、金子と聞いた瞬間に三体の神姫は一斉に顔を顰める。唯一、能面のように無感情だった黒野白太は普段通りの笑顔を取り戻していた。 「来てないよ。まぁ、イロイロあったからね。」 「そうか。やっぱり三人とも神姫バトル辞めちゃってるのかもな…。」 「あんな事があったんだ。家族から神姫を捨てろって言われていても可笑しくは無いしね。それは僕達が何とかしていい問題じゃないよ。」 「…そうだよな、残念だけど「残念だけど僕はもう行くから。じゃーねー。」あ、あぁ、じゃあな。」 あっけらかんと赤見青貴から離れた黒野白太はふらふらとしていたがふと立ち止まってイシュタルだけに聞こえるように言った。 「紫原と緑間と…金子さん、元気かなぁ。」 それは神姫である自分が関わっていい問題ではないと、イシュタルは無言の内に込めて返答していた。 …。 …。 …。 それから数時間後、神姫センターが終業時間を迎えたので黒野白太は自転車を漕いで帰宅していた。帰宅して直ぐに黒野白太は学校から出された宿題を片付けてイシュタルと一緒に今日行った神姫バトルの反省会をする。 宿題に懸けた時間よりも長い反省会を終わらせてから入浴し寝間着に着換え髪を乾かすとベッドに潜り込んだ。風呂から出た時点で神姫であるイシュタルはクレイドルの上で休眠(スリープモード)になっている。 某のび太張りに素早く眠る事の出来る神姫に少しばかり羨ましいと思いながらも掛け布団に身を包ませた。「おやすみ、イシュタル。」と最後に今この部屋に居る唯一の家族の名前を呼んで黒野白太は全身の力を抜き、やがてゆっくりと夢の世界へと落ちて行った。 そうして朝になり黒野白太は眠りから覚め腕を目一杯伸ばして予めセットしておいた目覚まし時計を叩いて耳障りな息の根を止める。のそのそと芋虫のようにベッドから降りてから立ち上がり欠伸をしてから軽く柔軟体操をして固まった身体を解す。 イシュタルはまだ休眠(スリープモード)になっていたので起こすがしばらくの間はふらふらとしていて見ていて危なっかしい限りである。「わはひは、朝に弱いんだよ…。」とは本人の弁ではあるが果たして神姫が朝に弱いとはどういう事だろうか。 兎にも角にもそんなイシュタルに注意しつつも着替えた黒野白太はイシュタルとさっさと朝食をつくりさっさと食べ切る。食器を洗い食器棚に戻した後、黒野白太は風呂掃除をしたが危く石鹸で足を滑らせ床に顔面を叩きつけるという悲劇を引き起こしそうになった。最後の最後で踏み止まった自分を褒め称えつつも風呂場から出ると残り時間ギリギリまで新聞を読む。 最近神姫による爆発事件が起こっているらしい、黒野白太は武装紳士の一人として一抹の不安を覚える。神姫の爆発事件を知りイシュタルを見ると、彼女ははうつらうつらなまま昨日バトルに使った武装の手入れをしている。黒野白太は人差し指でイシュタルの頭を撫でて、寝惚けている彼女はその事に気付かなかったが、時計を見て新聞を畳んだ。 そろそろ学校に行く時間だ、今日も特に予定は無いからイシュタルは置いて行く事にする。学校用の分厚い手掛け鞄を持ち新聞の天気予報に依れば午後から雨らしいのでビニール傘を持っていく。 「行ってきます。」 「いひってらっしゃい。」 マンションの玄関に出て一回に降り自転車小屋へと向かう途中、黒野白太はふと足を止めて空を見上げた。曇りの空は灰色で僅かな日差しが漏れるだけで確かに午後に雨が降ると言われれば誰でも納得出来るだろう天気である。ただ黒野白太が見ているのは曇りの空ではなくちょっと思ってしまった事を呟いてしまった。 「八年前―――両親に神姫を勝ってもらっていなかったがどうなっていただろう。」 過去の「if」考えても過去が変わるわけでもない、それなら未来の「if」を考えた方が建設的だ。黒野白太自身それはよく分かっていたがそれでも感傷的に考えざる得ない。これまでの文字数9628。その内で神姫が関わっていないのは僅か948文字だ。 「一日の約十分の九が神姫と関わっていても、それ以外は何も無くても、両親とも友達とも今は殆ど関わっていなくても、人生に生き甲斐を見出している残念ながら僕は幸せだと思ってしまう。」 それが本心だった。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2675.html
「ある少女が森で花を見つけた。その花はとても綺麗だったものだから少女は花の種を持ち返って家の庭で育ててみようと思った。でも少女が家の庭で一生懸命に育てた花は感動を与えた花を咲かせる事は無く枯れ果ててしまった。即ち花に限らずありとあらゆる生物は環境の奴隷で山中で綺麗な花を咲かせる花も環境が変われば花を咲かす事は無く枯れてしまうという事。僕はこれは人間の恋愛にも当て嵌まると思っている。例えとして同じ大学に通う相思相愛の男女がいるとしよう。男はいつもしっかり者の女が好きで女はいざという時に頼りになる男が好き。二人はデートから始まりプロポーズを経て×××をする。で、二人は何事も無く大学を卒業して職に就けたとする。それから数年経った後も二人の相思相愛は続くのか? 答えはノーだと僕は思う。先程も言ったけど生物は環境の奴隷だ。行く場所が大学から会社に変わり二人を囲む環境が変われば二人も変わってしまうんだ。変わった後も相思相愛が続く可能性は限りなく低い。就職して直ぐに別れるなんて事は無いけど段々と二人の間に大きな溝が出来る筈だ。この溝は精神的な変化に伴うものだから塞ぐ手段は無い。でも溝の大きさを零に近付ける手段はある。それは相手を知る事さ。より具体的に言えば相手の家庭を知る、両親は何をしている人だとか普段は何を食べているのかとか住んでいる家の構造だとか知る事。そんなのはストーカーだと言う人もいるだろうけど僕はそうは思わない。家庭は人格を形成する重大な要素の一つだ。花と土の関係と言っても過言ではない。家庭を知る事はその人の性格を知る事と同義なんだ。ギャルゲーなんかで幼馴染が魅力的なのもこの辺りが原因だね。何せ幼馴染だから互いの家庭を知り知られているわけだし。それに結婚や出産を視野に入れるのであればいずれ自分と婚約者の二人で一つの家庭を作らなければならない。その時に婚約者の家庭も知らずにただ自分はこう育ったからと自分の家庭を婚約者や自分の子供に押し付けるのは身勝手極まりない。断言しよう。相手の家庭を碌に知らない奴が嘯く告白なんて所詮は綺麗だからと花を摘む少女と同じ上っ面から出た感情だ。付き合いを認めて欲しいから相手の両親に会いに行く? 逆だろ馬鹿。相手の親の顔も知らず付き合いが出来ると思っているのか。そういうわけで『付き合い始めたらそれを認めてくれない向こうの両親が壁として立ちはだかる』展開は僕は大嫌いです。別に僕は人と付き合うのには許可が必要だと言いたいんじゃない。自分達が付き合う事で両親が敵になる事を予想しない連中を告発する。無知は罪だ。何も知らない癖に何も知ろうともしない癖に愛しているなんて分かった風な口を叩いてんじゃねー!」 「そうか成程。だから君は恋人は居ないどころかボッチなんだ。」 「ボ、ボッチちゃうわ!」 等とテンプレ的な会話をしつつ、いいとも増刊号を見ながらも昼食を食べ終えた黒野白太と休息をしていたイシュタルはだらだらしていた。休日になると普段の彼等は神姫センターに向かい神姫バトルに没頭しているのだが今日は何故か黒野白太が「今日はだらだらしたい。」と言ってイシュタルが折れた。 と言いつつも神姫バトル一筋だった黒野白太は家庭用ゲーム機すら持っていないのでする事が無く結果的に「だらだらと」勉強時間を増やしただけだが。友達の居る奴はこんな時スマブラでもやっているのかなぁと益体の無い妄想をしつつ箸を動かしていると滅多に鳴る事の無い携帯電話から着信音が鳴り始めた。 聞き慣れていない突然の着信音に初めは「うぉぉっ。」と驚きつつも画面を見てみると見覚えの無い電話番号が表示されている。間違い電話かと勘繰ったが人の間違いは指摘してあげなければ可哀想だという純然な善意に動かされて通話開始ボタンを押し携帯電話を耳に当てる。 「はいもしもし、こちら間違い電話ですが。」 『相変わらず何を考えて生きているのか分かりませんわね、まだ精神病院への入院手続きは済ませていないの?』 「ん、この人格を否定する容赦無い罵倒は、バアル(黒野白太の友人が持つイーダ型神姫。イシュタルをライバル視している)か。」 『貴方が平然としているという事はイシュタルは無事らしいわね。残念ですわ、大義名分を持って戦えると思ったのに。』 「イシュタルは無事?………神姫絡みで何か事件があったの?」 『そう言う事です。一時間前に各地の神姫センターに新型の神姫専用ウイルスがばら撒かれました。』 「わお。今時そんな事する奴が居るんだ。」 『楽しそうに笑ってますけど、洒落になっていませんのよ。このウイルスは神姫に人間を攻撃させる効果を持っているのですから。』 「そりゃ不味いね。でも安心してよ、イシュタルは無事だから。じゃーねー。」 『待ちなさい、無事だと言うのなら本題に入りますわ。警察からの協力要請として貴方達にこの地区の神姫達の鎮圧を頼みたいのです。』 「やだよ。何で一般ピィ(→)ポォ(↑)である僕達がそんな面倒臭そうな事をしなくちゃいけないの。」 『今はまだ実害は出ていませんが、もし事件の鎮圧が長引いて実害が出ればまた神姫の是非が新聞で叩かれるますのよ。 貴方はそれでいいの?』 「いいよ別に。イメージアップはそこらへんの奴がやるだろうし。暴徒の鎮圧なんて僕のキャラに合ってない。」 『この…!…あら、何かしらバッカス。え、代われ? ちょっと待って、この馬鹿には言いたい事が…無理矢理取らな『ぃよう、白太。』 「バッカス(バアルの相方のアーク型神姫)か。言っておくけど僕は袖の下を貰っても参加する気は無いよ。面倒は嫌だなんだの言いながら首を突っ込む主人公(お人好し)と一緒にするな。」 『分かってるよ、あんたがどんなキャラかくらいは。だからあんたに相応しい理由で動いてもらう。…バイツァ・ダスト。』 黒野白太の表情が遠くから見ても分かり易いほどに明確に歪んだ。 『あんたが竹姫葉月との戦いで使った技…あれはギリギリアウトなプログラムを使っている。それがバラされたら…分かるよね?』 「う…、や、止めて。あれはほんの出来心だったんだ。なんか異名持ちは皆必殺技持ってるから、つい。」 『ついで済ませられたら警察はいらね―よな。でもまぁあんたにはマスターの友達だし、それなりの誠意を見せてくれればバイツァ・ダスト(笑)なんてお前の黒歴史ノートと一緒に焼却してやろうじゃないか。』 「…はい、精一杯努めさせていただきます。」 『よっし、じゃあイシュタルを連れて神姫センターに向かえ。あたし達もそっちに行くから、センターの一階で合流しよう。』 「時間が宜しければ個人的な好奇心を満たす為の質問をさせていただいても宜しいでしょうか。」 『いきなり気持ち悪い口調になったな。なんだよ。』 「…何で警察からの要請を神姫がやってるの?顔見知りだって事を差し引いても可笑しいよね?」 『あたしとバッカスのコンビはもう警察官としてそれなりの実績を出してるからだよ。給料だって貰ってるぞ。』 「え、何それ。」 『ふふん、この十五センチの身体じゃないと解決出来ない事件と言うのもあるんだ。じゃ、遅れずに来いよ。』 「了解。…あのー、イシュタル?…どこにっぐぁ 通話終了ボタンを押した黒野白太は事を伝えようと思ったがイシュタルは先程まで直ぐに近くで新聞を読んでいたのに新聞以外は見当たらない。かと思えば一瞬の後に後頭部に鈍い痛みが伝わりそのまま衝撃に乗せらされテーブルクロスに猛烈なキスをさせられた。テーブルクロスから顔を離した黒野白太は眼を「× ×」にして頭上で星を回しながらも元の位置に戻っていたイシュタルを目にする。イシュタルは基本クールな性格のストラーフ型にしては珍しく慈母のような微笑みを見せて子をあやす母親のように優しく穏やかに語り掛けた。 「私は怒ってないぞ。」 「はぁ…。」 「マスターの違法行為を止められなかった私の責任でもある。だからこれについてとやかく言う権利は私には無い。」 「なら何で殴ったの。」 「だが仮にも武装紳士を名乗りながら神姫をどうでもいい等と発言するのは駄目なんじゃないか? いや、恥ずかしくはないのか? どうなんだ、うん?」 「でも僕は悪くな…ごめんなさい、僕が悪かったです。目玉は抉らないで、僕は現実を虚構にするなんて出来ないから。」 「他の武装紳士を乏しめた罪は労働で償おうじゃないか、マスター。早く準備をしてセンターに行くぞ。」 「…神姫に脅されたり殴られたりするマスターって世界中を探しても僕一人なんじゃ…「何か言ったかマスター?」イエス、何でもありません、マム!」 「何故、軍隊式なんだ…。」 軍人のようにきびきびとした動作で外出の準備を終えた黒野白太は外出用の鞄に潜り込んだイシュタルと共に神姫センターに向かった。 …。 …。 …。 「やぁ、待ってたよ。白太君。」 馬車馬の如く自転車を駆り神姫センターに入った黒野白太とイシュタルが目にしたのは散乱した商品と両手に額に包帯を巻いて自称店長こと小泉一郎の姿だった。神姫センターの惨状は予想していたが敬愛している店長の傷付いた姿に黒野白太は驚かざる得ない。その理由を問い質そうとすると同時に自動ドアを開け潜ったバアルとバッカスの到着に質問は中断させられ黒野白太の代わりにバッカスがその傷の理由を尋ねた。 「全く、酷い有様です事。あら、店長、どうしたんですか、貴方がそんな傷を負うなんて。」 「パニックになった客に突き飛ばされたんだ。幸い軽い傷だから気にしなくていい。それよりも君達には早く事件を解決して欲しいよ。これじゃ僕の店を開けない。」 「ここが店長さんの店かは置いて置いて、もうワクチンが出来ていると言うのは本当なのか?」 「うん、この対策ソフトを君達にインストールすればプログラムの影響は受けない。」 「一度掛った神姫からそのウイルスはもう取り除けないのですか?」 「取り除くこと自体は簡単だし取り除いても後遺症は無いから安心して。でも、このプログラムはとんでもないよ。」 「とんでもない?…違法な改造をすれば神姫に人間を攻撃させる事くらい容易でしょう?」 「指針が偶々人間への攻撃ってだけさ。このプログラムの本質はそこじゃない。本当の効果は神姫の無意識に干渉する…詩的な言い方をすれば神姫に夢を見せるプログラムだ。」 「夢を見せる? ピーターパンでも現れるのか?」 「このプログラムが全世界の神姫に組み込まれたら人間と神姫で戦争が起きるかもね。」 「ブファ!」「キャァ!」「うわ、汚っ!」「…どういう事だ?」 「通常の神姫には『人間に悪意を持ってはいけない』とか『人間を傷つけちゃいけない』とか『犯罪をしちゃいけない』とか人間にとって都合の良い禁則事項が無意識下に組み込まれている。これがAIの上位に存在するから神姫は例えマスターに命じられたとしても人間を攻撃したり犯罪を犯したりする事が出来ない。改造して取り除けば別だけどね。でもこのプログラムは改造を必要としない。このプログラムはAIにとって都合の良い様に禁則事項の解釈させる事で禁則事項を遵守しつつも人間に対し反逆する事を可能にさせる。言うだけなら簡単だけどやるとなると、とんでもないよ。要するにこのプログラムを埋め込まれた神姫の精神は限りなく自由になり造物主である人間に近づくのだから。」 「…元に戻せるんですか?」 「戻せるよ。人間に近づいてしまった神姫達の捕縛が先だけどね。説明もそこまでにして、対策プログラムを組み込むからそこのクレイドルに座りなさい。」 店長が指示した先にはパソコンと繋がれたクレイドルが三つありイシュタル、バアル、バッカスの三体は各々のクレイドルを選んで腰を下ろし一度休眠(スリープモード)にした。完全に物言わぬ人形と化した三体を見届けた店長はパソコンのキーボードに叩いて作業を終わらせた後、罅の入った瓶底眼鏡を外して黒野白太と向き合った。 「どのくらいの時間が掛るんですか?」 「二、三分ほど。AIのセキュリティを強化するだけだから、そんなに時間は掛らない。」 「そうですか。…あの、もしかして僕達が相手にする神姫は「わざわざ全部言わなくていいよ。君の想像通りだから。」 黒野白太の想像したものとは、今回の騒動の引き金となったプログラムはあくまであくまでキッカケに過ぎないのではないのかと言うもの。自分達が今から捕縛する神姫は人間に悪意を抱きつつも禁則事項によって悪意を抱く事が許されず自分の心を殺されていた者達ではないか。元々から邪悪だったのか、マスターが劣悪だったのか、環境が醜悪だったのか、それは分からないが、分かる事は一つだけある。この戦いは勝っても誰も喜ばない、捕えられた神姫達は運が悪くて処分され運が良くても再び自分の心を殺されて元の場所に戻されるだけなのだから。 黒野白太は眼を伏せると、ふぅ、と、やれやれ、とも言いたげな溜息を吐いて、肩の力を抜いて店長を見つめ返した。 「何だ、つまりこれは暴徒鎮圧なんかじゃなくてゴミ掃除って訳ですか。」 「その二つに大差は無いと思うけど?」 「全然違いますよ、モチベーションって奴が。あー、帰りたい。もう僕帰っていいですか? イシュタルは置いておきますんで。」 「まぁイシュタルがいれば楽勝だろうけどいいの? そもそも君はバッカスに脅されてきたんじゃないの?」 「な、何でそれが分かったんですか。」 「君が警察の仕事を手伝う理由なんてそれくらいしか思いつかないし。」 「ぐぬぬぬぬ…カマに掛けられたというわけですか…。」 「それにもうインストールは終わるから逃げられないよ。はい、これ。護身用の神姫専用の麻酔銃。」 一目では玩具の銃かと思ってしまう程に小さな拳銃が店長の手から黒野白太の手に渡った瞬間、タンと単調な音の後に麻酔銃が弾き飛ばされる。何事かと二人が目を張り音が聞こえてきた方へと向くと何時の間にかセンターに入っていた八体の神姫が徒党を組んで銃口を突き付けていた。 「動くな。私達の目的はセキュリティソフトと『刃毀れ(ソードブレイカー)』のイシュタルだ。」 人間から見れば人差し指程の大きさの銃火器も先程見ての通り人間を痛めつけるには十分な威力を秘めているのは分かり切っている。 両手を上げて無抵抗の意を示したと分かった神姫達は、二体が二人の挙動を見張り、五体が未だ休眠のイシュタルとバアルとバッカスを囲む。先程要求を突き付けたジルリバーズ型神姫が店長が操作していたコンピュータの前に立つとキーボードに飛び乗り器用にも踊るような足踏みでコンピュータに指示を出している。ジルリバーズの大胆に胸元が開いたバイクスーツから見える谷間に全神経を注いで注目しつつも黒野白太は彼女達の行為に対する疑問を口に出してみた。 「でもさ、例えイシュタルが禁則事項を守らなくなっても、僕を攻撃するとは限らな「黙れ。」 黒野白太の素朴な疑問は言い切られる事も答えられる事も無く見張っていた神姫が放った命令と小指に突き立てられたナイフで返された。 どうやら彼女達はイシュタルを、ついでにバアルとバッカスも、拉致するつもりらしい、神姫達はセンターの備品であるガムテープで三体の両手足を縛っている。そして黒野白太と店長は人質と言う事で三体と同様の処置をされており、人質と言う物には好き勝手にお喋りをする権利は無いと言いたいのだろう。異名持ちにまでなった神姫とそのマスターを捕え、マスターを人質にする事で神姫には自分達の味方になってもらう、常套手段である。 どうやってこの場から逃げ出そうかと二人は思索しているとふいに正確無比な稼働音と共に天井から弾丸の雨嵐が降り注いだ。奇襲に気付いた五体かの神姫は雨の当たらない場所にまで逃げ切るが、気付けなかった残り三体は装甲諸共腕や脚を穿たれて倒れ伏す。先に天井から五体の神姫が降り立って各々が手に持った刃物で黒野白太、店長、イシュタル、バアル、バッカスを拘束しているガムテープを切断する。 それを阻止せんと何体かの神姫が襲いかかるがまだ天井には神姫が隠れているらしくその神姫達からの援護射撃で退かざるえなかった。そもそもインストールなんてされていなかった事に気付いた黒野白太はイシュタルに手を伸ばし休眠を解除する。状況は一転した、正体不明だが味方らしい神姫達と、襲撃を仕掛けた神姫達と、イシュタルの三つの勢力が睨み合い牽制し合っている。 緊張が場を支配する中で店長は自分達を助けた側の神姫の一体であるアーンヴァル型神姫に話し掛けた。 「えーっと、助けてくれてありがとう。それで、君達は?」 「私達はそのプログラムを受けても尚、マスターと人間達を守ろうと誓った神姫達です。店長さんとイシュタルさんの危機を知って駆けつけました。」 「要するに善玉か。でも君達も人間に害を与える可能性がある以上は僕達の捕縛対象だよ?」 「構いません。これは私達も話し合って決めた事です。」 「それに相手は君達と同じ無改造の神姫だ。…人間への悪意を押し殺していただけの、ね。」 「それでも私達はマスターと、その周りの人達が大好きなんです。失いたくないんです。だから皆を守る為に戦います。」 「…ふん、黙って聞いていれば随分と身勝手なんだね。自分達の平和の為に私達を生贄に捧げるってわけか。」 襲撃を仕掛けてきた神姫達の中から先程のジルリバーズ型神姫が前に出て口を挟んできた。 「あんた等は人間の本質って奴を何も分かってない。あいつらは負けたら私達のせいにして何度も何度もリセットをする。私達の気持なんて、知らずにさ。」 「否定はしません。そういうマスターがいるのは私達も知っています、見たことだってあります。」 「それでもあんた等は引き金を引く事に躊躇わないのか。」 「知っていても、分かっていても、見ていても、私達には守りたい絆があるんです!」 「ふん、開き直ったか! 所詮はお前達も人間達と一緒だよ! 困った時は私達の所為にして平気で切り捨てる!」 「それは分かっています…いつかは私達も貴方達と同じ目に遭うのかもしれない…それでも私達は戦います! 大好きなマスターの為に!」 「いつか終わる幸せの為に戦うのか…救いようの無い馬鹿だよ、あんた等は!」 アーンヴァルとジルリバーズの舌戦が加熱している、それに従い互いに突き刺さり合う敵意が益々鋭さを増し引き金に触れる指先にに力が篭る。僅か十五センチほどの乙女達が抱く戦意は歴史に並ぶ英雄達が抱くそれに勝るとも劣らない、これもまたプログラムの影響だろうか。溺れてしまいそうな戦意の中、黒野白太は非常に分かり易く、わざとらしく、明確で大きな声で「こほんこほん。」と咳込んだ振りをした。何事かと二つの勢力の神姫達の視線が一斉に黒野白太に集まりそれに答えるように凛とした顔を保ったまま口を開いた。 「えー、神姫が人間に近付くプログラムに始まり人間が善いとか悪いとかシリアスな話になっていますね。作者も『どうしてこうなった』と頭を抱えています。しかし今ではもう乗り掛かった船です。このままシリアス路線で突っ走りましょう。というわけで人間代表として僕は意思表示をしたいと思っています。双方とも悲愴の覚悟で戦いに臨んでいます。この戦い、善悪という二元論で語っていいものではないのでしょう。でも僕の意思は先程からずっと変わっていません。」 「全て等しくどうでもいい。」 「それが僕の意思です。全ての神姫はマスターの勝利の為に存在するのです。それ以外に神姫に存在理由なんてものは無いと言っていいでしょう。そこのジルリバーズは人間達は神姫の心が分からないと言いました。当たり前です、勝てない神姫なんてゴミと同然です。ゴミの心をどうやって分かれと言うのでしょうか?そこのアーンヴァルも、絆とか言ってますけど、『神姫はマスターに勝利を捧げる』それ以外に何も無いのに無い物をどうやって守ると言うのですか。というか何で上から見線なんですか?君達、もしかして木偶(人形)から猿(人間)に近付いた所為で調子に乗っていませんか。人間が善いだの悪いだの語るのはファンタジー物の最終戦辺りでやってくれませんか。ここは武装神姫のSSサイトです。君達神姫は何も言わず何も思わず何も考えず何も感じずマスターに勝利を貢いでいればいいんですよ。」 神如く傲慢に満ちた上から目線の言葉にその場の敵意が一斉に黒野白太に向けられた。人間を守ると誓った筈の神姫達の中にも黒野白太への敵意を包み隠さず銃口や剣先を向けている神姫がありアーンヴァル型神姫が必死に宥めている。それでもどの神姫も黒野白太を攻撃しなかったのは彼を攻撃してしまえばその隙に敵勢力が一斉に攻めてくる事を予期しているからだ。 油と水が同時に注がれた所為で余計に強く燃え盛る戦意の炎は、天井からの降り注ぐ弾丸の雨嵐で掻き消された。だが先程とは違い、弾丸は先ずアーンヴァル型神姫達の四肢を貫き、遅れて突然の出来事に動揺したジルリバーズ型神姫達の四肢を貫く。無情なまでに正確な雨嵐が止んだ後にはその場に立つ事が出来る神姫は誰も残ってはいなかった。 何故、どうしてと動揺を隠せないアーンヴァル型神姫と、ジルリバーズ型神姫を眺めつつも、黒野白太は得意顔で天井を見上げると手の甲を高く掲げ上げた。手の甲にストラーフ型神姫、黒野白太の神姫であるイシュタルが降り立った、その姿を見た神姫達は今の銃撃は彼女の仕業である事を理解した。だが納得が出来ないと言った風な表情をするアーンヴァル型神姫は弾丸に貫かれた声帯機能を精一杯駆使して声を絞り出す。 「イシュタルさん…何で…私達まで…攻撃を…。」 「今回任された仕事はウイルスに感染した神姫を狩る事。つまり君達は全員、初めから私の標的だったというわけだ。」 「でも…私達は…人間の味方をして…。」 「仕事を抜きにしても私のマスターに銃口を向けた時点で君達は私の敵だよ。」 人間と異なり神姫は四肢を穿たれても動けなくなるだけで気絶する事は無いしそのまま放置されて失血死なんてものもするわけがない。イシュタルは倒れた神姫達一体一体の胸に掌底を叩き込み強制的に神姫を起動停止(ダウン)させる。 その間に店長はジルリバーズ神姫に弄られたパソコンと向き合ってデータをチェックし、黒野白太はバアルとバッカスの休眠を解除した。今まで休眠だった為に事情を知らない二人の目に飛び込んで来たのはさながら戦場の跡の様に野晒にされた神姫の死屍累々。 「ううん…さて、じゃあ早速…ってうわぁ、何これ!?」 「まさか休眠の間に襲われたのですか!?」 「襲われたけど大丈夫だよ。全部イシュタルが仕留めたから。」 「この数を?…うわぁ、流石イシュタル、異名持ちはやっぱり格が違うなぁ。」 「店長、白太さん、どうして私を目覚めさせてくれなかったのですか!」 「どうしてって…そりゃイシュタルは一人の方が強いし。」 「俺としては乱戦になって店を荒らされたく無かったから。」 「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ…。」 唇を噛み締めながらもあらん限りの敵意を露わにするバアル、それを向けられても動じず黙々と神姫を起動停止させるイシュタル。イシュタルの作業が終わり戻ってきた彼女を見計らって状況はようやく落ち着きを取り戻し二人と三体は今後の事を話し合う。 「それで、バッカスは暴徒の鎮圧って言っているけど、具体的にはどうするの?」 「とりあえず先ずは数を捕まえる事だな。私達は動物と違ってAIがあるから全部捕まえるのは難しいし。」 「一般市民の神姫には外出をしないよう指示を出してありますから外で見かけた神姫は全て敵と見て宜しいですわ。」 「神姫ネットにも大々的に注意が出てるね。それにセキュリティソフトもインストール出来るようになってる。」 「じゃあ後は外に出て狩るだけですね。イシュタル、あれを使うよ。…この台詞、一生に一度でもいいから言ってみたかったんだ。」 無駄口を叩きつつ黒野白太が鞄から取り出したのは黒い光沢を放つクルーザータイプのバイク、細部は異なるもののジルリバーズ型神姫のそれに酷似している。二輪と三輪という違いはあるもののバイクへの変形機能を有したイーダ型神姫であるバアルとアーク型神姫であるバッカスは目を光らせた。 「ジルリバーズ型のアメリカンタイプのバイクだよね。どうしたの、これ。」 「今年のイシュタルの誕生日…僕の家に来た日に買ってあげたんだよ。」 「神姫に誕生日プレゼントなんて…白太さんはイシュタルにはとことん甘いですわね。」 「もしかしてもなくて、イシュタルは操縦出来るの?」 「当然だ。操縦出来なければただのバイクの模型だろう。」 構造が気になるのかバイクの周りをぐるぐると回ってじろじろと眺めているバッカスは車体に黄色で「Astaroth」と書かれている文字に気付く。 「Astaroth…アスタロト?」 「バイクの名前だ。私が付けた。」 「アスタロトとは確か悪魔の名前でしたわね…成程、悪魔型神姫の貴方らしいですわ。」 「星が入っていたから、というのもあるがな。」 「へ?…あぁ、成程…ってイシュタル、それに乗ってどこに行くつもりなのさ!」 「狩りに行く。数にもよるが…二時間ほどで終わるだろう。それまでは店長の手伝いでもしていてくれ。」 「一人で行くつもり!? 無茶もいいところだわ! 白太さん、止めてあげなさい!」 「いや…さっきも言ったけどイシュタルは一人の方が、それこそ僕(マスター)が居ない方が、強い。これは卑屈でも何でもない、真実だ。」 「僕も白太君と同意見だよ。イシュタルは一人の方が強い。君達は足手纏いにしかならない。」 「そんな…。」 「イシュタルはこの数を神姫を相手にして僕達を一切傷付ける事無く勝った。…君達二体が居たら、そうならなかっただろうね。」 「…。」「…。」 ダウンした数多くの神姫が物語り黒野白太が付け足した事実にバアルとバッカスは何も返す事が出来ず沈黙する。だがその表情には口に出す事が出来ない悔しさが滲み出て、かと言って矛先を向けるべき物は無く、恨めしげな顔で八つ当たり同然にイシュタルを見る。 それを了承の返事だと受け取ったイシュタルは背中で視線を受け止めつつもバイクを発進させセンターの外へと走り出した。イシュタルを見届けた黒野白太は携帯電話を取り出し幾つかのボタンを押すと画面に公道を走っているイシュタルの姿が映った。 「ほら、これでイシュタルの様子が見れるよ。一緒にだらだら傍観してようぜ。」 「…白太は。」 「うん?」 「白太は悔しく無いのか? 足手纏いで。マスターのあんたが居ない方がイシュタルは強いって知っていて。」 「んー…あんまり気にしていない、と言うか、どうでもいいかな。」 「どうでもいいって…何であんたはへらへら笑えるんだよ!」 「だから、どうでもいいからだよ。僕は神姫バトルに勝ちたいだけの武装紳士だから。僕が足手纏いとかイシュタルが強いとかは、どうでもいい、どうでもいいからだよ。」 携帯電話の画面の中でイシュタルがヴァッフェバニー型神姫をアスタロトで撥ね飛ばしていた。それでも尚も抗うヴァッフェバニー型神姫にイシュタルは擦れ違い際に掌底を叩き込み前の神姫達と同様にダウンさせる。 「逆に聞きたいんだけどさ。じゃあ僕は勝っちゃいけないの?」 「足手纏いは勝っちゃいけないの? 他人に迷惑を掛けて生きている人間は勝っちゃいけないの? 才能が無い人間は勝っちゃいけないの? 友達が少ない人間は勝っちゃいけないの? 運が無い人間は勝っちゃいけないの? 努力しない人間は勝っちゃいけないの? 絆が大事だと思わない人間は勝っちゃいけないの? 大切なものを守りたいと思わない人間は勝っちゃいけないの? 勝利より大事なものがあると思わない人間は勝っちゃいけないの? 性格が悪い人間は勝っちゃいけないの? 他人の事なんてどうでもいい人間は勝っちゃいけないの? 他人を煽る事が大好きな人間は勝っちゃいけないの? 神姫が強い人間は勝っちゃいけないの? マスターとしては最悪の人間は勝っちゃいけないの? 誰とも出会わない人間は勝っちゃいけないの? それでも僕は勝ちたいんだ。例え僕の人生にとっては無意味で無価値で無関係であっても、勝負に勝っても負けても引き分けでもね。」 「…白太さんは本当に何を考えて生きているのか分かりませんわね、」 「僕が考えているのは勝利だけさ。」 …。 …。 …。 それから一時間半後にイシュタルは神姫センターに戻ってきた。 警察に依頼された通り神姫暴走事件は一応鎮火され神姫センターを襲撃、守護しようと神姫達を含めて計五十二体の神姫が捕獲された。 その神姫達がどうなったのか、黒野白太は知らないし、知ろうともしないし、神姫達の存在すら明日まで覚えているつもりも無い。それよりも今回の事件の所為で『街を駆る武装ライダー』なる存在としてイシュタルが新聞記事に映っており折角の機会をどう活かすべきかに悩んでいた。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/493.html
戦うことを忘れた武装神姫・番外編 ちっちゃい物研・商品案内-7 ・・・武装神姫向けクレイドル・品薄のお詫び・・・ 先日の発売以降、大変にご好評を頂いております当社の各種武装神姫 向けクレイドルシリーズは、現在当社では全力を挙げて増産しており ます。しかしながら、当社の生産能力の関係上、皆様のご希望に添え ない市場在庫の状況となっており、御迷惑をおかけしております事、 深くお詫び申し上げます。 当社は品質を何よりも重視する方針でありますので、現在の生産数が 限界となっております。生産ライン等の見直しにより、来月後半には まとまった数の出荷が出来る見込みです。 何卒、今しばらくお待ち下さいますようお願い申し上げます。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ <東杜田技研・新製品のご案内-8> このたび、弊社の小型ロボット向け機器ブランド「HT-NEK」では、 ご要望が多く寄せられました「ぬくぬくこたつ」の4体用を、新たに ラインナップいたしました。 〜武装神姫簡易クレイドル・「おっきいぬくぬくこたつ」主な特徴〜 ■データ通信機能等を一切省き、「充電機能のみ」とした、簡易型の クレイドル。 ■電源には、USB3.1のみならず、ACアダプタ(付属)や、専用電池 ボックス(別売)、シガーソケットアダプタ(別売)を用いる事が 可能。いつでもどこでも、充電が出来ます。 ■デザインは、シンプルで、かつ飽きの来ない、ごく一般的な4人用 こたつ」そのもの。こたつ布団の柄は、5種類から選べます。 ■内部には遠赤外線装置が組み込まれており、実際に「暖かく」する ことができます。(寒がりの神姫に最適です。) ■本製品は、完全な充電専用クレイドルとすることで、よりお求め やすい価格に設定。 また、夏場には布団を取り外し、座卓型の クレイドルとしての使用も出来るようなデザインとしました。 ※本製品は完全な充電専用クレイドルです。オプションを用いても、 データ通信を行うことは出来ません。ご了承下さい。 ※初回生産分には、こたつ布団と同じ柄の「こたつ敷き布団」が付属 する予定です。 詳細は、下記を参照して下さい。また、新たな情報は随時公開いたし ますので、HPにてご確認下さい。 <武装神姫・簡易(充電専用)クレイドル「おっきいぬくぬくこたつ」> ・対応武装神姫 現在発売中の全武装神姫(純正クレイドルが使用可能である神姫に 限ります。) ・対応電源 USB3.1(同梱専用ケーブル)・ACアダプタ(同梱) 乾電池(別売専用電池ケース)・シガーソケット(別売専用ケーブル) ・対応オプションパーツ 弊社発売予定品 「神姫みかん」(食べられませんが、アロマ効果があります) 「おっきいこたつ布団」(色柄違い・各種) 「おっきいこたつ敷きふとん」(色柄違い・各種) 「おっきいこたつケース」(愛媛みかんの段ボール柄・1段仕様) (そのほかに付きましては、順次調査の上HPにて公開する予定です。) ・付属装置・付属品 マニュアル、USB3.1充電専用ケーブル、専用ACアダプタ、 おっきいこたつ布団(1枚) ・付属ソフトはありません。 ・動作条件(USB充電時) USB3.1を搭載し、Windows2037・MacOS12が動作可能なPC。 ・発売予定価格 (現在未定)13,820円(税込) ・発売予定時期 (来夏予定) 以上 <<トップ へ戻る<<
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2567.html
MMS戦記 外伝「敗北の代価」 「敗北の代価 11」 注意 ここから下は年齢制限のある話です。陵辱的な描写やダークな描写があります。 未成年の方は閲覧をご遠慮下さい。 □ 重邀撃戦闘機型MMS「リカルダ」 SSSランク 二つ名「ミョルニル」 オーナー名「春日 凪」♀ 20歳 職業 神姫マスター 真っ赤に燃え滾るヒートナギナタを振り回し,戦国時代の武将のように名乗りをあげるリカルダに対峙する神姫たちは、ぽかんを口を開けて呆然と立ち尽くす。 オーナー1「な、なんだァ!?あいつ!」 砲台型C「あれがSSS級の化け物神姫、リカルダか」 悪魔型「び、びびるな!!!敵は一騎だァ!!!」 一瞬、神姫たちに動揺が走ったが、すぐさま体制を建て直し、リカルダを取り囲むようにじりじりと移動する。 春日はバトルロンドの筐体に備え付けられているタッチパネルを操作し、状況を把握する。 春日「残り、88機!敵は3つの集団に分かれている」 春日はマーカーで3つのくくりを作る。 春日「まずは集団A、陸戦タイプの神姫を中心とした大集団、数は50、どうせこちらの速度にまともについていけない、適当につぶしておけ」 リカルダ「イエス」 春日「次に集団B!!空戦タイプの神姫を中心だな、数は1ダース(12機)、機種はアーンヴァル、エウクランテ、アスカが多いな・・・まずはこいつらから血祭りにあげろ、皆殺しだ!」 リカルダ「OK」 春日「最後に集団C・・・砲戦タイプの神姫ばかりだな!数は20、機種は戦艦型4隻、戦車型6両、砲台型10台!鈍亀ばかりだ、うまく誘導して同士撃ちにさせろ」 リカルダ「了解」 春日はバンっと筐体を叩く。 春日「見敵必殺(サーチアンドデストロイ)!!!見敵必殺だ!!立ちはだかるすべての障害を排除しろ!」 リカルダ「Sir,Yes sir MyMasterrrrrrrr」 ヒュイイイイイイイイイイイイイイイ リカルダのリアパーツに装備されている巨大な素粒子エンジンが緑色に輝く粒子を撒き散らし唸り声を上げる。 巡洋戦艦型A「奴を倒せば兜首だ!賞金を手に入れて富と名声を手に入れろ!」 装甲戦艦型A「支援射撃を開始する!全神姫突撃突撃ィ!!」 数隻の戦艦型神姫が主砲をリカルダに向けて発砲するのを皮切りに再び神姫たちが吼えるように声を上げて、武装を手に掲げてドッと津波のように襲いかかる。 神姫「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」 リカルダはまったく臆することなく、巨大な素粒子エンジンを全開に吹かして真正面から突撃を仕掛ける。 リカルダ「あは、あはっはは!!この程度の数の神姫でこの俺を倒せるとでも?笑わせるッ!!!」 轟とエンジンを轟かせてリカルダは燃え盛るナギナタを引っ掴んで迎え撃つ。 砂漠を砂埃を立ち上げて、真っ先に攻撃を仕掛けてきたのは、ハイスピードトライク型 アーク、ハイマニューバトライク型 イーダ、モトレーサー型 エストリル、クルーザー型 ジルリバーズのバイク使いの4神姫だった。 バイク使いの4神姫はリカルダの姿を認めると、ばっと散開し一斉に手持ちのマシンガンやキャノン砲、ハンドガンで射撃を開始する。 リカルダ「遅い遅すぎるぜ、それで速く動いているつもりか?」 リカルダは地面スレスレをホバリングするように砂山や岩を盾に攻撃を回避し、ズンと地面を強く踏みしめると、同時に地面に巨大な亀裂と穴が穿つ。 パンッと空気が爆ぜる音がしたと同時に、ハイスピードトライク型 アークの紅の武装が異常な形にくにゃっと歪みバラバラに分解されて吹き飛んだ。 □ ハイスピードトライク型 撃破 真横を走っていたクルーザー型のジルリバーズの目が見開かれる。 ジルリバーズ「なっ・・・」 ぐしゃぐしゃに潰れたトライク型の後から破壊音が衝撃波となって届く。 ドギャアアアアアアアアアン!! チカチカと何かが光ったと思った瞬間、モトレーサー型 エストリルの薄いピンク色の体が黄色い閃光に飲み込まれて爆散する。 □ モトレーサー型 撃破 ジルリバーズ「あ、あああ・・・」 彼女の眼前で瞬く間に僚機が沈む。 あまりにも速い、度外れた速さ、圧倒的な凄まじい破壊の力に彼女は驚愕し見届けることしか出来ない。前方でハイマニューバトライク型イーダが変形を解除し、大剣を構えて対抗しようと、リカルダに攻撃を仕掛けようとするが・・・ 次の瞬間、ジルリバーズの横を薄緑色の塊が軽々と宙を舞いすぐ脇を通りぬけていく。 風が唸る。 ゴキン 鈍い金属音が聞こえる。その音の正体を最初は理解できなかったが、崩れ落ちるバラバラになった自分の体がジルリバーズの視界に移ると意味を理解した。 ジルリバーズ「は・・・はや・・・速すぎる」 □ クルーザー型 ジルリバーズ 撃破 ズドンズドンズドン!! 戦艦型神姫の砲弾がリカルダの周囲に着弾するが、リカルダはまったく意に介さず無視する。 リカルダ「おいおい、なんだ?その動きは舐めているのか?あああん?的撃ちじゃねーんだぞッォ!!!!!」 リカルダは顔を歪ませて新たな敵に向かって突進する。 音速を超え、超高速の剣戟に、対峙する神姫たちはまったく捕捉しきれなかった。 悪魔型「うおおおおおおおおおお!!」 巨大な刀を携えた悪魔型が雄叫びを上げて強化アームを振りかざし突撃するが、リカルダは悪魔型が刀を振るう前に胸部を突き殺す。 □ 悪魔型 ストラーフMk-2 撃破 間髪いれずに今度は巨大なハンマーを携えた白い悪魔型とソードを構えた黒い悪魔型が躍り出るが、リカルダは副腕のレールキャノンをくるんと廻して、胸部を正確に撃ちぬく。 □ 悪魔型 ストラーフ・ビス 撃破 □ 悪魔型 ストラーフ 撃破 脇を小柄な2体の神姫が槍と剣を携えて飛び出してきたが、リカルダは2体まとめて燃え盛る紅蓮の炎を纏ったヒートナギナタで文字通り薙ぎ払った。 □ 夢魔型 ヴァローナ 撃破 □ 剣士型 オールベルン 撃破 樹脂の溶ける焦げ臭い不快な匂いを撒き散らして四散する2体の神姫。 リカルダの強烈な攻撃の様子はさながら嵐のようであった、音よりも速いリカルダの攻撃は空気を引き裂き、爆ぜ、対峙する全てのものを打ち砕く。 次々に撃破のテロップが流れる。 まるで音楽を奏でるかのようにリカルダは縦横無尽に戦場を駆け回り、刈り取るように神姫を撃破していく。 □ 犬型 ハウリン 撃破 □ 猫型 マオチャオ 撃破 □ リス型 ポモック 撃破 □ フェレット型 パーティオ 撃破 □ ウサギ型 ヴァッフェバニー 撃破 □ 騎士型 サイフォス 撃破 □ 侍型 紅緒 撃破 □ 花型 ジルダリア 撃破 □ 種型 ジュビジー 撃破 □ サソリ型 グラフィオス 撃破 春日「30、31・・・」 春日はにやにやしながら腕を組んで数を数える。 怯えた白鳥型が大剣を盾に悲鳴をあげて後ずさるが、リカルダは大剣をガードの上から叩き割った。 ズン・・・ 真っ二つに引き裂かれた白鳥型の表情には驚愕の念が浮かんでいた。 彼女は決して弱い部類の神姫ではなかった。数多の戦場を先陣切って誉高く駆け、敵を討ち取ってきた武装神姫である。 だが、違う。 こいつは違う。 一刀両断されて始めて違いに気がついた。 こいつは普通じゃない。 白鳥型「ば・・・化け物め・・・」 □ 白鳥型 キュクノス 撃破 春日「32!!総数の3分の1を殲滅した、残り68!さっさと片付けるぞ」 春日は筐体の画面を操作して状況を把握する。 リカルダ「だめだ、弱すぎる・・・お話にならない」 参加していた神姫のオーナーたちはたった数分間で100体いた神姫の3分の1が潰滅した事実にただ言葉も無く息を呑む。 いま眼前で繰り広げられた戦い、リカルダの桁ハズレの強さ。 次々となすすべもなく撃破されていった仲間たちを見て陸戦主体の残った神姫たちは完全に戦意を喪失して、武装を放り出して逃げ始めた。 カブト型「だ、だめだァ!!こんなの勝ってこないよ!」 クワガタ型「ひ、ひィいいい」 ヤマネコ型「やってられるかよ!!!」 がしゃがしゃと手持ちの武器を捨てて逃げようとした瞬間、後方からチカチカと青白い光が瞬く。 建機型「!?」 ドッガアズガズッガアアン!! 装甲戦艦型A「撃て撃て!!撃ちまくれェ!!」 巡洋戦艦型A「逃げる奴は敗北主義者だ!!!敵もろとも攻撃しろ!!!」 重装甲戦艦型A「奴を倒せば1億円なんだぞ!!断じて引くな!!後退は認めん!!」 数隻の戦艦型神姫が味方もろとも無差別に砲撃を始め、瞬く間にフィールド内は阿鼻叫喚の地獄絵図に変わった。 ドンドンッドオドドン!!ズンズウウン・・・・ カブト型「ぎゃあああああああ!!」 虎型「ウワァ!!」 丑型「いやああああああああああ!!撃たないで撃たないでェ!!!!!」 猛烈な艦砲射撃がリカルダと周囲にいる神姫たちを巻き込んで行なわれる。 戦艦型の取り巻きの戦車型、砲台型も味方を撃つことに戸惑っていたが、手段を選んでいる場合ではないと悟ったのか、一緒になって見方もろとも攻撃を始めた。 □ 建機型 グラップラップ 撃破 □ 虎型 ティグリース 撃破 □ 丑型 ウィトゥルース 撃破 □ ヘルハウンド型 ガブリーヌ 撃破 □ 九尾の狐型 蓮華 撃破 次々とフレンドリーファイヤーの表示が出ながら撃破のテロップが踊る。 瞬時に周りは地獄と化した。その光景は凄惨そのものだった。目の前で多くの神姫たちが生きたまま焼かれ、重症を負い、そして粉々に砕かれて宙を舞った。 ズンズンズン・・・・ ものすごい爆煙と砂埃で砲撃地点は黒茶色の巨大なキノコ雲が立ち上り、ボンボンと神姫が爆発する音と赤い炎が巻き起こる。 上空を数十機の航空MMSが心痛な面持ちで眺めていた。 天使型「下は地獄ですね」 セイレーン型「うわあァ・・・」 ワシ型「イカレ野郎もろとも吹っ飛ばしてしまえ!!」 ワシ型が手を掲げてファックサインをする。 ドッギュウウウム!! 戦闘機型「おぐ・・」 戦闘機型の胸部を黄色い閃光が貫き、爆発する。 □ 戦闘機型 アスカ 撃破 爆煙と砂埃の中から勢いよくリカルダが飛び出し、真っ赤に燃え盛るヒートナギナタでワシ型MMSを一刀両断で切り捨てる。 □ ワシ型 ラプティアス 撃破 リカルダ「コイツァ最高だぜ、ふ・・・恥も外聞もなく味方もろとも攻撃してくるとはなァ・・・」 リカルダは笑いながら次々と航空MMSをハエのように叩き落としていく。 □ コウモリ型 ウェスペリオー 撃破 □ 戦乙女型 アルトレーネ 撃破 天使型「このおおおおおおおおおおおお!!」 天使型の一機が、上空からライトセイバーを構えて突撃してくるが、 リカルダは最小限の動きで回避し後ろを取る。 リカルダ「はずしやがったな!まだまだガキの間合いなんだよ!」 天使型「そ、そんな!!うわああああ!!」 ズッドン!! □ 天使型 アーンヴァル 撃破 天使型の頭部を跳ね飛ばした次の瞬間、リカルダを含む周囲の航空MMSたちにむけて葉激しい強力なレーザー砲の一斉射撃が加えられる。 ビシュビシュウウビッシュウウウウン リカルダ「おわっ!!」 あわててリカルダが回避する。 ズンズンズン!! □ 天使型 アーンヴァル 撃破 □ 天使型 アーンヴァル・トランシェ 撃破 □ 天使型 アーンヴァルMk-2 撃破 □ 戦闘機型 アスカ 撃破 リカルダの回りを飛んでいた航空MMSを強力なレーザーが貫き、空中に炎 出来た光球を作る。 重装甲戦艦型「ヘタクソォ!!貴様らどこを狙っている!!」 巡洋戦艦型A「ウルセェ!てめえが撃てっていうから撃ったんだろがァ!!!」 装甲戦艦型A「畜生畜生!!」 装甲戦艦型B「ひゃっはああーーー!!!もうだめだァ!!」 巡洋戦艦型B「なにをしている攻撃の手を休めるな!!!」 またしても後方にいる戦艦型神姫の一群が味方もろとも巻き込むのも承知の上で砲撃を加えてきたのである。 1度ならず2度までも、味方を巻き込む非道な攻撃を行い続ける神姫たちに観客たちはブーイングを鳴らす。 観客1「お前らさっきからナニやってんだよ」 観客2「このクズヤロウ!!さっさとしとめろ!」 観客3「誤爆誤射ばっかりやんてんじゃねーんだぞ!!このダボォ!!」 観客4「こいつらさっきから味方撃ちしかしてねえーーーーー」 観客5「なにがしてーんだよ!!このクソヤロウ!!」 グラスやゴミをフィールドにいる戦艦型に向かって投げつける観客たち。 オーナー1「うるさい!野次馬ァ!!」 オーナー2「黙れ黙れ!」 オーナー3「どーしようが俺たちの勝手だろ!」 オーナー4「戦いに誤射誤爆はつきものだろが・・・ボケが!」 オーナー5「装甲戦艦!!副砲撃て!!!あの野次馬連中を黙らせろ!!」 装甲戦艦型B「了解、モクヒョウ カンキャクセキ 撃ちかたーーーーーーーーーはじめ!!」 あろうことか、戦艦型神姫のうちの一隻が観客席に向かって副砲で発砲しはじめたのである。 ズンズンズズン!! 観客1「うわあああああああ!!撃ってきたぞ!!」 観客2「キャアアアアアアアアア!」 観客席の2階の中央のテーブルに砲弾が命中し、料理が爆発して飛び散る。 ドガアアアン!! 2階の観客席で春日たちの戦いを観戦していた神代の顔にべちゃっりとケーキのクリームが降りかかる。 脇に立っていたルカが悲鳴をあげる。 ルカ「きゃああ!!マスター大丈夫ですか!!」 神代が顔に付いたクリームを手で拭き取り舌でぺろっと舐めて片つける。 神代「大丈夫だ、問題ない」 バトルも観客席も戦艦型神姫の無差別な艦砲射撃で大混乱になる。 司会者の東條があわててマイクで放送を行なう。 「観客の皆さんはフィールド上の神姫にモノを投げないでください!!フィールド上の神姫は観客の皆さんに攻撃しないでください!!危険です」 フィールドにいる戦艦型が反論の激を飛ばす。 巡洋戦艦型A「最初に攻撃してきたのはアイツラだろ!!これは正当な反撃行為!自衛のための防衛行動だ!!」 装甲戦艦型B「戦艦に喧嘩売るとは上等じゃねえか!!ぶっ殺すぞ!!!!」 観客3「こいつらなんとかしろよ!!」 観客4「危ない!!危ない!!危ないよ!!」 観客5「おまえらは一体誰と戦ってんだ!!このボケカス!!」 春日はアッハハハと大声を上げてパンパンと手を叩いて喜ぶ。 春日「すばらしいこれこそ混乱だ!!戦場に混乱はつきもの!!最高じゃないか!!」 リカルダ「さあて・・・と残りはC集団のみ、ちゃっちゃと終わらせてやろう」 リカルダはヒュヒュンとナギナタを振り回し、突撃する用意に移る。 戦艦型神姫の一群と戦車型、砲台型が多種多様な砲口をリカルダに向ける。 戦車型A「パンツァー1より全パンツァーへ、敵は高速戦闘に特化した航空MMSだ、対空榴弾装填!!穴だらけにしてやれ」 戦車型B「パンツァー2了解」 戦車型C「パンツァー3了解」 戦車型D「パンツァー4了解」 砲台型A「砲撃モードに移行!焦るなゆっくり狙って確実に当てろ!」 砲台型B「畜生!ブチ落としてやる」 砲台型C[負けネーゾ] 重装甲戦艦型「全艦、全砲門開けェ!!火力で磨り潰せッ!!!!」 巡洋戦艦型A「火力とパワーはこちらの方が上だ」 装甲戦艦型A「一億円は俺のものだ」 巡洋戦艦型B「くそったれ、やってやる」 装甲戦艦型B「蜂の巣にしてやる」 ギラギラと目を光らせる大砲を主兵装備とする武装神姫たち 。 戦艦型神姫は巨大な体に据付けられた主砲をゴリゴリと動かす。一撃でも命中すれば神姫を粉々に粉砕できる強力なレーザー砲を搭載し、全身に対空機関砲とミサイルを装備している。単純な火力だけでは戦艦型神姫は最強クラスの戦闘能力を有する。また分厚い装甲に守られ、撃破するのは非常に困難だ。 戦車型神姫は戦艦型とはいかないまでも、強力な戦車砲とそれなりの厚い装甲を備えている。また何台かの同型の戦車型とコンビを組んで安定している。 砲台型もがっしりと地面に腰を下ろし、砲撃モードに移行し、優秀なFCSによって高い命中率と速射性能を有した滑空砲を搭載し待ち構える。 大型の戦艦型神姫、中型の戦車型、小型の砲台型のバランスの取れた鉄壁の布陣で、リカルダを待ち構える20機あまりの重武装の神姫たち。 リカルダとは対照的に、機動性を完全に最初から捨てて、がっしりと待ち構える神姫たちに隙はなかった。 こいつらは、味方ですら遠慮なく攻撃する下種だ。だが、その分勝つことには躊躇せず破壊的なオーラを纏っていた。 間違いなく強敵、そう感じ取った春日は内心、ほくそ笑んでいたが、命令を下す。 春日「大砲屋風情が調子に乗るなよ・・・リカルダ!!遠慮はいらん!!攻撃しろ!」 リカルダ「イエス、イエスマイマスター」 ぐっと身を固めるリカルダ。 さっきまで野次を飛ばして騒いでいた観客たちも一斉に押し黙る。 そしてひそひそと話し声がもれる。 観客1「まさか本当にあの砲火の前に突っ込むんじゃないよな?」 観客2「ありえんだろ?あの完璧な布陣になんの策もなしに突っ込むのは自殺行為だ」 観客3「あの陣形は点や線の攻撃なんて生温いものじゃない、面での攻撃だ」 観客4「面制圧か・・・この猛砲撃を掻い潜って奴らを殲滅できるとしたら、文字通り化け物だ・・・そんな神姫がいるのか?」 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>[[]] 前に戻る>「敗北の代価 10」 トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/ps4borderbreak/pages/760.html
[部分編集] 2020年6月22日実装。周囲にニュード粒子を散布して起爆し、衝撃の高い爆発を起こす吸着式地雷。起爆時間は一律0.5秒 転倒判定が実ダメージの3~5倍で行われる(武器毎に異なる、未検証)という、極めて高い転倒倍率が特徴。 武器詳細テキストにはニュード粒子と書かれているが、属性自体は爆発100%。 リムペット方式で何処にでも吸着し、設置後は「ピロ、ピロ」と電子的な音を発する。 起爆方式は近接信管かつ感知範囲は球状全方位で8mの半径があり、罠としては非常に広い。ただし設置から感知(起爆準備開始)までに1秒ほど(具体数値は未検証)かかる。 また、感知範囲は地形を貫通している。曲がり角を曲がる寸前の敵機を感知して、曲がり切った敵の横っ腹にクリーンヒットさせる事もできる。 一方で薄い壁・天井・床の裏側など、明らかに爆風の届かない位置の敵機に反応して暴発する事故も起きうるので注意。 見た目の大きさからしてインパクト抜群のデカさ。どうやって携帯収納してたんだこれ? 使用感としては「どこでも付く代わりに、目立つようになったジャンプマイン」といった具合。つまりジャンプマイン同様に、感知から爆破までのタイムラグのせいで相手に逃げられる、感知後でも流れ弾に当たると起爆前に消し飛ぶといった弱点を抱えている。 長所のハズの感知範囲の広さも、反応の良いプレイヤー相手だとむしろ致命傷を狙いにくくなってしまうので、痛しかゆしといったところ。 最速クラスの脚部で高出力ACやマルチXを吹かして突破してきた場合、長距離の直線上に置くとほぼ被害ゼロで通過されるリスクもある。 踏むor目の前を通るなどでほぼ確実にスペック通りの威力を与えるヘヴィマインや只と比較すると、ダメージ源としてはやや信頼性に欠け、ベース防衛に用いるには不安が残る。 そして、本武器の最大の特徴である高い転倒倍率は、必ず有利に働くわけでは無い諸刃の剣。 起爆タイミング次第では妨害するどころか相手の移動を大幅に助けてしまうため、設置位置にはより一層の注意が必要となる。 凸ルート上に設置したら逆に利用されて、通常は踏破できない魔法のルートが開通…というのはマップに左右される面があるにしても、 味方をノックバックで妨害しつつ敵凸を低いダメージでコア側に弾き飛ばすことは十分あり得る話。 特にネソス2階ベース前に仕掛けようものなら、下手すればベース傘下へ頭からダイブしつつ「かかったな!罠支援ッ!これが我が『コア凸経路』だ…!」なんて笑えない事態にもなりかねない。 運用方法としては、防衛は防衛でもリムペットボムでやる様な自己防衛的な戦法がマッチする罠になっている。 自機を狙ってきた敵機を設置個所にうまく誘い込んで、マインで転倒したところに主武器でトドメを刺すのが基本戦術。 移動妨害やベース防衛が目的なら、「自動ドア裏」「リフト終点」「パワーパウンダーの真上や着地点」といった、脚が止まる場所を意識するといいだろう。 「ここはすもうのめいしょ」である高層サイトで転落死を狙うのはもちろん、段差を連続垂直ジャンプで登る地形の途中に仕掛けて叩き落とすのもオススメ。 自貼りできるので南斗人間砲弾も可能。カタパから直接プラントに乗り込めるようなMAPなら、カミカゼ特攻を仕掛けるのも悪くないかも。 耐久力は4000。実装時は支援副武器設置物の中で硬めであったが、アップデートにより他が硬くなってしまったため特長が消えてしまった。 以下余談。微妙に支援の動きと噛み合っていないこの武装、そもそもは故・狙撃兵装の副武器であったものが遊撃移行時にスリケンディスクシューター共々移ってきたものである。 つまり本来想定されている使用方法は似ていると前述した様にジャンプマイン亜種みたいなものであり、凸屋迎撃用の防衛罠として用いられる支援副武器とは根本的に噛み合っていないのはそれが原因。 自衛能力高めなのもおそらくは潜入工作に使われることを想定していたのだろう。支援の本分をかなぐり捨てることになるが、敵プラント単独制圧用にいかが? [部分編集] インパクトマイン系統 属性 爆発100% 名称 型番 重量 威力 装弾数 爆発半径 リロード 性能強化 インパクトマイン P6N-N 180171 83008632 1×5 22m22.9m 1秒 ①重量 171②爆発半径 22.9m③威力 8632 インパクトマインS P6N-S 200190 72007560 1×6 25m26.3m 1秒 ①重量 190②爆発半径 26.3m③威力 7560 インパクトマインV P6N-V 230218.5 1290013674 1×4 21m22.3m 1秒 ①重量 218.5②爆発半径 22.3m③威力 13674 [部分編集] + 調整履歴 調整履歴 インパクトマイン 2020/11/17(Ver.3.05)装弾数1発×4 → 1発×5 起爆時間0.75秒 → 0.5秒 耐久値3000 → 4000 2021/06/09(Ver.3.09)威力7300 → 80007592 → 8320 2022/12/20(Ver.3.18)威力8000 → 83008320 → 8632 爆発半径半径21m → 半径22m半径21.8m → 半径22.9m 感知範囲半径7m → 半径8m インパクトマインS 2020/11/17(Ver.3.05)装弾数1発×5 → 1発×6 起爆時間0.75秒 → 0.5秒 耐久値3000 → 4000 2021/06/09(Ver.3.09)威力6100 → 70006405 → 7350 2022/12/20(Ver.3.18)威力7000 → 72007350 → 7560 爆発半径半径24m → 半径25m半径25.2m → 半径26.3m 感知範囲半径7m → 半径8m インパクトマインV 2020/11/17(Ver.3.05)装弾数1発×3 → 1発×4 起爆時間0.75秒 → 0.5秒 耐久値3000 → 4000 2021/06/09(Ver.3.09)威力11800 → 1250012508 → 13250 2022/12/20(Ver.3.18)威力12500 → 1290013250 → 13674 爆発半径半径20m → 半径21m半径21.2m → 半径22.3m 感知範囲半径7m → 半径8m [部分編集] インパクトマイン インパクトマインS インパクトマインVP6N-N P6N-S P6N-V ©SEGA インパクトマイン 敵機を感知すると起爆性のあるニュード粒子を散布し、衝撃性の高い爆発を引き起こす特殊地雷。投擲すると接触物に吸着する。損傷力は低いが、敵機の体勢を崩しやすい。 系統初期型。(アケ版と一緒なら)転倒倍率3.0倍。 平均装甲±0%の相手に対して15.8m以内(3凸16.7m以内)で転倒発生。 確実性に欠けるくせに、当たっても怯み程度で終わってしまうことが多い。 壁に仕掛けられるようになった代わりに、弱体化した初期ジャンプマインといった感じの使い方しかできないので、器用貧乏な面が目立つ。 音がかなり目立つので「同じ場所に2個重ねればいい」とも言えないのが難しいところ。 重量180で支援副武器としてはなかなかの軽さではあるが、これだけを理由に採用するのは考え物。 インパクトマインS ニュード粒子の散布をコントロールすることで、攻撃範囲と衝撃性を向上させた特殊地雷。敵機の体勢をより崩しやすくなった反面、直接的な損傷力は低下している。 威力減と引き換えに、装弾数増&半径拡張でお馴染みのS型。転倒倍率は(アケ版と同様なら)4倍。 平均装甲±0%の相手に対して18.9m以内(3凸20.2m以内)で転倒発生。 PS4版調整で威力、範囲共に増加した結果、詳細テキストに恥じない広域衝撃を獲得。 ダメージに対しては全く期待できないが、転倒判定においては後段のV並みの強力な判定を持っており、怯みまで考慮すれば最も体勢異常を狙いやすくなっている。 プラント戦なんかで嫌がらせに撒くのならこれがおススメ。 なお、相変わらずAC吹かした凸麻には余裕をもってスルーされてしまう模様。 インパクトマインV 高圧のニュード粒子を大量散布することにより、衝撃性と損傷力の両立を実現させた特殊地雷。敵機に十分な損傷を与えられるが、重量化により所持数は限られる。 威力特化のV型。転倒倍率は(たぶん)4倍~5倍。 平均装甲±0%の相手に対して18.1m以内(3凸19.4m以内)で転倒発生。 平均装甲+50%の相手に対して15.3m以内(3凸16.5m以内)で転倒発生。 威力はたっぷり1万を超えており、3凸が直撃すれば軽量機の即死が狙える大威力。 当たれば3凸フルロージーだろうがダウンすること間違いなしの強転倒判定で、あらゆる敵をなぎ倒してくれるはず。 そう、当たれば。 系統中では最も敵を吹き飛ばしやすいが、爆発半径が系統最低で最も避けやすいというマイナスが大幅に足を引っ張っている。 PS4版調整で威力、範囲ともに強化されてはいるが、結局「足を止めなければそのままスルー可能」という点が変わっていないので、対凸トラップとしては相変わらず扱い辛い。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2696.html
おはようございますマスター。バイタルゲージに不調が見られますがお加減はいかがですか?失礼しました、MMSにそのような感情は不要です。本日のご予定はK2システムとのCSC生産台数の会議、フロントライン社長との生産台数に関する補助金の打ち合わせの後19:00からM重工の安川専務との会食、引き続き21:00よりK重工西岡様との打ち合わせです。 連続神姫ラジオ 浸食機械 11:復活の道 「暗いから気をつけてついてらっしゃい」 マイクロ波の罠から目の前の神姫に救われた僕たちは彼女に導かれて管理棟の中を歩いている。少なからず傷を負っていた僕たちを見た彼女は会わせたい人がいる、その人なら簡単な修理もできると言って僕たちを案内し始めたのだ。施設内と言うことで最初は警戒していたが、廊下ではなく排気ダクトの中に案内されたあたり何か事情があって見つかるわけにはいかない僕たちと同じような状況なのだと感じた。それはプルミエも同じらしく警戒こそ緩めないものの反対することはなかった。 曲がり角の先で赤毛の神姫が手招きをしている。どうやらゴールが近いらしい。 「マスター、構造的にあのダクトはあの扉の先につながっているようです。用心してください」 ダクトの換気口からドアの様子を確認したプルミエがモニタした映像と一緒に内線で僕に話しかけてくる。 <扉が溶接されてる?あの下の方に見えるのはトレーか何かを出し入れするための窓かな> 「まるで牢屋です。中にいるのは間違いなく人間。あんな扱いをされている以上敵対することはないでしょうが」 作戦会議をしながら赤毛の神姫の後について排気ダクトから出る。部屋の中は本や工具が多く、技術者の部屋のような印象を受ける。 「お父様、お客様をお連れしました」 声に反応し、部屋の奥にあったベッドから男の人が起き上がる。無精ひげが伸びたその人の顔を見て僕たちは思わず声を上げる。 「ご苦労だったな、ルート。彼らが私の出した条件を満たした者達なのか?」 「はいお父様。彼らならきっとお父様の望みを叶えてくれるはずですわ」 わずかに照れたような表情を浮かべているルートを見ながら僕は逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。僕は、いや、神姫を好きな人なら最悪の形でこの人の顔を知っているはずだ。 「初めまして。私は西園寺輝彦、この島の施設管理者だ」 サイバーフロント事件で多数の神姫を破壊する原因を作った神姫好きならいくら憎んでも飽き足らない男がそこにいた。 次回:選択肢3:脱出に続く・戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1635.html
鋼の心 ~Eisen Herz~ 第12話:夜の戦場(その4) 爆炎が闇を裂いたのは一瞬だった。 閃光が過ぎ去ればそこはまた、深い森の闇の中。 複合制御システム『デルタ』は“デルタ2”の自爆、自壊を確認しつつ、平行作業で“デルタ3”の自爆準備に入る。 (“デルタ2”の自爆は有効に機能したのです。ならばこれで勝てるのですよ!!) 得体の知れないバリアを持っている“敵”に対し、デルタが有する火器は全くの無力だった。 実のところ、デルタの性能は、単体の“神姫としては”かなり低い。 そもそもデルタシステムは戦闘目的のシステムではないため、神姫としての射撃精度やパワーは二の次で設計されている。 故に、神姫の性能によらない火器の性能。即ち火力と、デルタシステムの特徴である複数の視点、射線の完全な同調、そして、莫大な作業効率によるトラップワークこそが戦闘時にとりうる手段なのだ。 だからこそ、火器は持ちうる最高のものを装備して挑んでいる。 しかし。その火力で歯が立たないと言う事は、“敵”には射撃が通用しないと見ていい。 少なくとも、これ以上デルタが射撃を行ったところで、どうにかなるとは思えなかった。 しかし、交戦中に判明した事実として、格闘攻撃はある程度の有効性を持っていると判明。 続く自爆攻撃も、有効に機能したのは確認できた。 だがしかし。 (アレでは大したダメージは与えていないのです…) デルタの有する爆薬類はトラップを仕掛ける為の物であり、自爆用のものではない。 その為、殆どは指向性の強い“クレイモアマイン”タイプで、更に、敵の攻撃などで誘爆する可能性を考慮し、収納状態での起爆方向は背後に向けられている。 その状態で自爆したところで、正面に押さえ込んだ敵に対するダメージなどタカが知れているのだ。 (でも、それで充分なのです。衝撃と爆炎で充分な時間が稼げれば…) 必要な時間は、デルタ3が、自らの爆薬を手に持ち変える時間。 それはつまり、“起爆方向を押し付け”て再度自爆すれば、例え相手が何だろうと……。 「―――デルタ、ダメだっ!!」 「―――!?」 攻撃に移る刹那。主からの声にデルタは静止する。 それが攻撃をやめろと言う意味だと、“なんとなく”だが、理解できたのだ。 「…マスター?」 予期せぬ事態に並列処理の優位を忘れ、1、3“そろって振り返る”デルタ。 二つある視界の双方が、主の姿の確認に費やされたその瞬間。 デルタ3は消滅した。 ◆ 「目標、撃破」 フォートブラッグ、ブーゲンビリアは感情の無い声でそう呟く。 バイザー越しの視界は、1キロ離れた夜の森の中を克明に捉えていた。 自爆を試みた神姫は、自分と同じく砲台型フォートブラッグ。 動きが止まった一瞬を狙い、レーザー“class1”無照準照射(※1)。 照射時間は1秒ジャスト。 だがしかし、その一秒で、目標の神姫の上半身は完全に融解し、自らの爆薬の威力も加わり完全に吹き飛んでいた。 「上姉、無事?」 『無事? じゃ無いですわ!! 私より先にマスターの援護を優先させなさい!! このトラップを止めなければマスターの安全が確保できません!!』 上姉、ことカトレアの叱責が通信越しに飛ぶ。 カトレアとその主、京子の周囲には、未だ村上たちが張ったセンサートラップが作動し、京子の行動を制限している。 だが、それを承知でブーゲンビリアはカトレアの援護を優先した。 「上姉、窮地。優先順位高」 『あ~、もう。何言ってるのか分かるけど、判らない言葉で喋るのをやめなさい!!』 「拒否」 即答した。 あの自爆攻撃だけは流石にマズイ。 いかに鉄壁の防御力を誇る上姉とは言え、バリアの下の物理装甲には限度がある。 バリアで無効化できない攻撃によるダメージはしっかりと蓄積するのだ。 一方でマスターの方は動かなければ特に問題は無い。 対峙していた少女は逃してしまったようだが、現状の優先順位はカトレアの窮地に比して低いと判断した。 そんな思索の間にも砲身の冷却は終了。 『ブーゲンビリア、貴女ねぇ―――』 「次弾発射準備完了。目標指示?」 『……』 目の前にいるわけでもないのに、上姉が眉を寄せて困ったような顔をしているのがはっきりと分かる。 これ以上説教を続けるのが時間の無駄だと、理解しつつも納得できないのだろう。 『男の方が持っている鞄です。よく狙いなさい』 「了解」 ブーゲンビリアは答え、照準用レーザーの照射に移行した。 「セタ!!」 セタの狙撃により窮地を脱した雅は、その場を離れ狙撃地点で倒れていた自らの神姫を抱き起こした。 ここまで移動する僅かの間に、雅を追い抜いていった神姫はセタを撃破してのけたのだ。 攻防は一瞬。 それも、一方的なものだった。 「セタ!?」 「……マス、ター」 「……っ!!」 息を呑む雅。 (私は貴女個人を必要とはしていない、私に必要なのは強い神姫、よ……) 一番最初。 起動したてのセタに雅が言った言葉。 (良い主になるつもりなんて無いし、貴女に好かれようとも思わない) 雅はそう言ってセタの主になった。 だから、雅は……。 「セタ……」 彼女を抱き上げる必要など、無かった筈。 ……だった。 「サテ、如何シタモノカ……」 セタを倒した後、アルストロメリアは上空へ退避していた。 眼下で、自分の倒した神姫が主に回収されるのを見届ければここに用は無い。 死んでも構わないと思いはすれど、殺さずに済むならばそれに越したことは無い。 ストレリチア辺りは自分の事を『好戦的なバトルジャンキー』などと思っているようだが、その実、いざと言うときに非情に徹することが出来ないのは姉妹の中ではアルストロメリアだけだ。 「ぶーけヤ姉サンハモチロン。りちあデサエモ、イザトナルト容赦ナクトドメ刺シニイクモンナ……」 案外自分が一番平和的かもしれない……。 そんな事を思いながら手近な広場に降り立つ。 アルストロメリアの最大の武器である機動性は、4器のエクステンドブースターによって支えられている。 そのブースターを常に稼動させ続けることで、タイムラグ無しの回避行動が取れる事が彼女の最大の強みだ。 だがしかし、その性質上燃料の消費は激しく、戦闘時間は10分程度が限度。 必要の無いときは無駄に燃料を使いたくは無かった。 「マア、サッキノ戦イモスグ終ワッタシ……」 あと1戦位は余裕で行えるだろう。 (私相手ニ5分持ツ神姫ナド居ハシナイノダカラ……) そんな事を考えていたからか。 彼女はソレの接近に気付かなかった。 「ね~っ、こっこっこっこっこっこっ……!!」 「……ハイ?」 夜の森を割く高笑い(?)に、アルスが困惑の表情を浮かべる。 「ナ、ナニ……?」 辺りを見回すが、声の主など……。 「……居タ」 起伏に富んだ森の中でも、一際小高いその岩の上に、一匹のアホの姿。 「銀の翼に望を乗せて、渡る世間は鬼ばかり。港区生まれのスーパーガール美少女、美少女!! 猫仮面、惨状(←誤字)!!」 それは、間違いなく武装神姫で、全身を鎧うのはツガル型の標準装備一式。 背部のレールガンを雄々しく広げ、“明後日の方向に見得を切る、『目隠し』したマオチャオ”!! 「………? ………!? ………??」 理解不能な事態に困惑するアルストロメリア。 (何故目隠シ?) (正体を隠シテイルツモリ?) (ッテ言ウカ。モシカシテ前、見エテ無イ?) 様々な思考が溢れては消えるが、残った物は一つだった。 「……ばか?」 「バカじゃない。バカじゃないもん!! バカって言った方が馬鹿なんだぞ、やーい馬ー鹿、馬ー鹿!!」 必死になって指差すが、そもそも方向が70度ぐらいずれている。 「……あのね、見てる方向が違うわよ……」 その神姫のマスターと思しき女性が、頭痛を堪えるような表情で言う。 「はえ? こっち?」 彼女の言葉に反応し、その場で旋回する猫型神姫。 「逆よ、逆。反対方向に100度くらい……。ああ、行き過ぎ行き過ぎ!!」 「こうか?」 「おしい、もうチョイ右」 「んにゃ?」 マオチャオ、迷わず右ジャンプ。 「にゃ~~~~~~~っ!?」 足場にしていた岩から落ちた。 ―――ゴスっ!! 「痛てぇ!? 落ちた!? 落ちたよ今!! しかも何か痛そうな音とかしたし!?」 ジタバタのたうち、大騒ぎする猫。 「………エエト……」 取り落としたライフルなど手探りで探し(本気で前が見えてないらしい)、10秒ほどかけてそれを探し当てる。 「あった、あった。……って、折れたぁー!?」 落ちた時に壊れたらしい。 中ほどから真っ二つに折れたホーンスナイパーライフル。 「ああ、しかもレールガンまで砲身歪んでる(※2)!?」 打ち所最悪だったらしい。 背中のレールガンも砲身が歪んで使用不能になっている。 「くぅ、ネコをここまで追い詰めるとは…。貴様、中々やるな!!」 「だから、方向逆!! 逆ですわ!!」 「……ん、そうか」 素直に頷き反対方向を向いて……。 「……あっ、ちょっとタイム」 いきなり中断。 「……よいしょ、よいしょ」 岩を登って、その頂上に立ち上がり……。 「銀の翼に望を乗せて―――」 「「やり直すなーーーーーっ!!」」 「ふにゃぁ!?」 その神姫の主と同時に突っ込むアルストロメリア。 そして、ビックリして再度岩から転げ落ちる馬鹿なネコ。 「あ~、もういい!! 覆面止め止め!!」 そう言って目隠しを毟り取るマオチャオ。 どうやら本気で覆面のつもりだったらしい。 「……コレガ、天海最強ノ神姫……。まやあ……?」 なんて言うか、目の前が真っ暗になった。 「むむっ、ネコの正体を見やぶるとは、やるな貴様!! そしてそこまでだっ!!」 「……何ナノ、これ?」 「ふふふ。ネコこそは謎の覆面戦士マヤア!! 貴様の野望もココまでだ!!」 謎とか言いつつ名乗ってる、名乗ってる。 しかももう、覆面無いから…。 「ヤ、野望トカ言ワレテモ……」 「何だと、野望の一つも無いなら死んだほうがマシだ!!」 「死ネト言ウ!?」 「因みにネコの野望は『みのうや』の鯛焼きを、白餡、漉し餡、粒餡と連続で食べる事だ!!」 「安ッ!?」 因みに『三直屋』のタイヤキは、一個350円の高級品である。 彼女は主から一度に一個以上買い与えられた事は無い。 「それはさて置き、そこの悪い奴!!」 「……ワ、私……?」 正直関わり合いになりたくないなー、という表情で嫌々答えるアルストロメリア。 「そう、そこのお前だ、お前!! よくもセタ坊をいぢめたな!! 次はこの、ネコが相手だ!!」 戦闘総数1000以上。 内、敗北が僅かに数回。 天海神姫センター最強の神姫。 通称“化け猫”。 ………。 “お化け”猫ではない。 化け物猫の略称だ。 さて。 そう聞いてどんな神姫を想像するだろうか? 陽気な武道家? クールな傭兵? それとも、無慈悲な狂戦士? どんな想像をしようとも、この手の馬鹿であるとは想像もつくまい。 少なくとも、アルストロメリアはこんな神姫だなどとは夢にも思って居なかった。 「……モウイイヤ、撃ッチャエ……」 そうして、アルストロメリアは引き金を引いた。 ◆ 「―――雅ん!?」 「え?」 セタに応急処置を施していたら、唐突に伊東美空が現れた。 「姉さん?」 寄りにもよって祐一を伴って。 「な、ななな……」 そう。 寄りにもよって、だ。 寄りにもよって、このタイミングで、この場所に、祐一とフェータを連れて現れてしまった伊東美空。 彼女の神姫を狙う相手とは100mも離れていない。 「……ば、ば、ば、ば……」 「は、びばのんのん?」 「―――違うよ、黙れよ。ってか何でここに居るんだよ!? とっとと旅館に戻ってろ~、肝試しだぁ、ばかぁ!!」 てんぱった。 なんと言うか予想外の事態が連続して起きるので、さしもの雅もパニック状態になる。 どうしてこの娘が絡むとペースが乱れるのだろう? セタとフェータの対戦などを思い出しつつ、そんな事を思い出している場合じゃないと余計にパニくる雅。 「折角人が苦労して何も知らせずにおこうと思っているのにどうして自分から棺桶に突進してくるかぁ!?」 「マスタ~、落ち着いてぇ~!!」 分け分からなくなってジタバタ暴れる雅を必死で宥める忠犬セタ。 「姉さん、とりあえず深呼吸」 「うん」 弟の意見に素直に頷く姉。 「すー、はー、すー、はー」 肺の中の吸気を入れ替え、雅は顔を上げる。 「―――いい、二人ともよく聞いて(キリッ)」 「……ぷっ」 「……くっ」 唐突に真面目な口調に戻った雅に、祐一と美空が笑いを堪えていた。 デルタ3の反応途絶。 デルタ1は反射的にデットウエイトと化したデルタシステムを停止させ、処理速度を本体に戻す。 これで神姫単体の性能は戻ったが、システム全体の戦力は1割り近くにまで低下。 もはやデルタに勝ち目が無いことは、その場の誰にも明らかだった。 (冗談じゃないのです。これだけの損害を出すなんて想定されていないのです) (デルタ3を攻撃したのは誰なのですか?) (索敵に処理を振り分けて広域索敵。目標はまだ残っているのです) 思考を展開し聴覚センサーと視覚センサーをフル活用し戦況の把握を行う。 (視界が狭いのです。これでは満足に戦えないのです) (夜間用の増光センサーの使用、可否?) (閃光弾に対する耐性と利便性を考慮し決行) 3機の神姫の視界を共有していたデルタにとって、今の視界は覗き穴から世界を見ているようなものだ。 普段なら迷わないような事にも処理を必要としてしまう不便さは、彼女にしか分からない感覚だろう。 だがしかし。 最大の問題はそれではなかった。 (マスターは何故止めたのですか?) デルタ3の撃破は確認するまでもない。 そちらに振り返る事も無かったデルタの視界には、今も主である村上衛が映っている。 「マスター、―――っ!?」 視界を横切る赤い線に気付いたのは、その時だった。 村上の持つコンテナへと続く赤い線。 可視光線では無い。神姫であるからこそ見える赤外線レーザー(※1)。 (赤外線? レーザーサイト?) 誰かの射線が、主を狙っている。 「マスター!!」 警告は、間に合わなかった。 「―――くっ!?」 ボンッ。 と、呆気ない音を立てて村上の持っていたコンテナがその機能を停止する。 周囲に張り巡らされていたセンサーの檻も同時に消え去った。 「……」 想定していた勝ちパターンはこれで完全に潰えた。 もはや今の村上とデルタに、京子とその神姫をとめる術は無い。 「……万事休す、ですね……」 「マスター……」 この状況を招いたのが他ならぬ村上である事はデルタにも否定できない。 あそこで止めなければ確実にカトレアと名乗った神姫は撃破出来たはずなのだ(※2)。 「マス―――」 「―――村上、衛」 デルタが問いかけるより早く、彼に声をかけたのは、敵であるカトレアだった。 ◆ カトレア。 村上衛のアーンヴァルを破壊し、その記憶とCSCを元に京子が作り上げたジルダリアにとって、目の前の男はマスターではない。 かつて、“そう”であったと言う別の記憶があるだけだ。 「策は、もうお終いですね……?」 「…………」 図星を指されると黙る。 自分のモノではない記憶が彼の沈黙を答えとした。 「……カトレア……」 どうして、と続けようとしても、村上にはその先は口に出せなかった。 (どうして?) そんな事は決まりきっている。 神姫の個性と記憶は別物だ。 例えばデルタにアイゼンの記憶を入れれば、アイゼンとしての思い出を持つデルタになる。 簡単ではないが、不可能でもない。 村上衛に出来るのならば。 ……土方京子に出来ない訳が無い。 彼女は、“CSCの開発に直接立ち会っている人間”だった。 「マスター。後始末は私が(※3)……。マスターはアルストロメリアと合流して目標を追ってください。位置の特定は上空で監視をしているストレリチアが……」 そこで、カトレアは木々の合間を走ってくる人影に気付く。 「…!?」 『姉さま、目標なのです!! すぐ傍なのです!! そっちに向かっているのです!!』 無線越しにストレリチアの声。 木々の覆い茂る夜の森では上空からの監視は万全では無い。 ストレリチアがフェータの存在に気付いたのはカトレアとほぼ同時だった。 「村上さん!!」 「え、村上さん?」 「祐一君!? ……それに美空さんと、……フェータさん!!」 もちろん、祐一の肩にはアイゼンも居る。 つまり、彼らが守ろうとした対象全てが、京子の前に姿を晒していた。 ◆ 現状を鑑みて、ストレリチアは戦慄する。 単に無警戒な神姫を破壊するだけの簡単なミッションは、当初の予定を大きく外れ複数の神姫が入り乱れる乱戦となっていた。 「……アルス姉さま、敵なのです。早く戻るのです!!」 『無理、コッチモ忙シイっ!!』 無線から聞こえるアルストロメリアの声に混じって彼女の耳が拾っているであろう周囲の雑音が聞こえてくる。 しかし、その中に断続的に響く破裂音。 (発砲してる!? 戦闘中なのですか?) 「アルス姉さま!?」 『煩イ!! これハ、オ話シナガラ戦エルヨウナ相手ジャ無イノ!!』 余裕の無い喋り方を聞けば、彼女が苦戦しているのは疑いようも無い。 (アルス姉さまが、苦戦?) アルストロメリアは姉妹の中では最も攻撃力が低い。 だが、逆に最も戦闘力が高い神姫でもある(※4)。 そんな彼女が苦戦する相手。 (天海最強とうたわれる、例のマオチャオですか…!?) 正解である。 だが、流石にその戦闘内容までは予測の外だった。 ◆ 「…っ!?」 驚愕したのは他ならぬアルストロメリア自身。 フルオートの指切り点射(※5)で撃った7発の銃弾は2発当たっただけで、他は外れ。 だが、有効打は只の一撃も無い。 この2発とて、かわすよりも受ける方が楽と踏んでの事だ。 装甲の表面を引っ掻く以上の戦果は無い。 「……バ、化ケ物?」 彼女と対戦した神姫の中でも、その実力のあまりの差に気付けた一部の者が口をそろえて言った台詞を、ここで彼女も口にした。 「……クッ!!」 中空に跳んだマヤアの着地を狙って、2丁のアルヴォからのフルオートで弾幕を張る。 複雑に絡み合う火線はしかし、マヤアを避けるようにその脇に逸れ、あるいは弾かれる。 いや、逆にマヤアがそうなる様に身を捌いているだけなのだ。 一発目の銃弾は顔の脇を通過。 二発目は走る動作のために振り上げた腕の下。 三発目は傾斜角度の浅い部位の装甲に流され、肩のアーマーを掠めただけで効果なし。 四発目は走る動作の中で振り上げた腕、その手の中にあるハンドガンを掠めて明後日の方向へ跳弾。 五、六発目は彼女の脇に大きく逸れて森の中へ消えていった。 七発目は彼女が銃を構える動作の中、その銃に弾かれて角度を変え、頬を掠めただけに終わる。 傍から見れば、弾幕の中に頭から突っ込んでいるのに、何故か無傷だという不思議な光景。 少し目が良ければ数発は当たった事に気が付くし。もっと目がよければその数発が完全に利いていない事も分かる。 更に目が良ければ……。 それが偶然でも何でも無く、単に自然な動作の中でマヤアが微かに行う回避行動の結果だと分かる。 そして、そこまで分かった時。この神姫がどれ程の化け物なのかが理解できる……。 この七発の処理に、マヤアはコンマ1秒もかけていない。 それはつまり。 「銃弾ヲ、『見テカラ』避ワシテイルトデモ言ウノ!?」 マヤア認識能力がそのレベルに達しているということでもある(※8)。 「ん~。結構見えるし、割と避わせるよ?」 「……正真正銘ノ、化ケ物ネ……」 アルストロメリアが感じたそれは、間違いようもなく戦慄だった(※9)。 ◆ 「―――なら、助けに行かないと……」 「祐一!?」 現状を伝え、逃げるように促した雅に対し、祐一の返答はそれだった。 「……フェータを一人で逃すのは危険なのよ? 分かっているの?」 「でも、村上さんとデルタがそんなヤバイ奴の相手をしているのなら助けないと……」 島田祐一にとって、理由はそれで充分だった。 ここに雅の誤算が一つある。 彼女がフェータを京子から守ると決めたのは、それが“祐一の気に入った相手”であったからだ。 フェータが失われれば祐一が傷つく。 ならば雅にとってはフェータを守る事は村上やデルタを守ることよりも優先される。 もちろん、セタや自分を守ることよりも、だ。 だから、雅は選択を誤った。 雅がフェータを守る為に盾にしようとしたモノ全てに……。 島田祐一は、フェータと等価の価値を見出していたからだ。 村上もデルタも。 雅もセタも。 浅葱もマヤアもリーナもレライナも。 そしてもちろん美空とフェータも。 島田祐一は全て守るつもりでいた。 ◆ 「……そちらから来てくれるとは、随分と都合が良いな?」 「……っ」 睨まれ、睨み返す美空。 「……でもその前に、俺たちが相手だ……」 そう言って、両者の間に割り込む祐一とアイゼン。 「……なるほど。最後の難関と言う事か?」 自嘲気味にそう呟いて、京子はその場の全員を相手にする覚悟を決めた。 単にフェータを奪うだけならば、他にもっとリスクの少ない方法があるだろう。 だが、彼女はそうしない。 それが。 そう出来ると、四姉妹を信じているからなのか……。 それとも。 誰かに、自分の凶行を止めて欲しいと想っているからなのか……。 それは彼女自身にも分からなかった。 ◆ 『これで2対3なのです。不利なのです。私も降りて参戦するのですよ!?』 「下姉。駄目」 ブーゲンビリアはそう言ってストレリチアを止めた。 現状がこうなっては、戦力が一人増えても大した意味は無い。 それよりも、伏兵を一人残す方を彼女は選択したのだ。 「最悪時、結果全滅」 だが、そうなった時に僅かにでも隙が出来れば―――。 「下姉、出番」 目的は試作型アーンヴァルの確保と、マスターである京子の無事のみ。 ならば、自分たちの敗北ですらも、相手の油断を誘うカードと成り得る。 「尤(もっとも)……」 ブーゲンビリアに負けるつもりなど毛頭無かった。 「……目標補足」 さて、先ずは邪魔な死に損ないから始末するとしよう。 ブーゲンビリアは、レーザーの目標にデルタを選んだ…。 ◆ レーザーは光速であるが故に、発射と着弾に時差が無いも同然である。 引き金を引いた瞬間に、命中していると言っても良い。 だから。 『……何故!?』 狙われたデルタが避けることはもちろん。 「…え? さっきのレーザー? ボクを狙って……?」 それを『庇う』事など出来る筈がないのだ。 「危ない所であったな、デルタよ……」 「レライナさん!?」 「私も居るわよ?」 「リーナ?」 こうして最後の役者が舞台に上がる。 「我の連れあいを害そうなどと不届き千万……」 神速を誇る青の騎士。レライナが其処に居た。 「祐一、レーザー砲は私とレライナで仕留めるわ!! 貴方は其処のジルダリアを!!」 「ああ、頼む。……デルタとフェータは下がってて。アイツは……」 「……私が倒す」 そう言って、アイゼンは副腕でカトレアを指差した。 続く。 第12話:夜の戦場(その5)につづく 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る 今回は試験的に本文中に注釈を入れてみました。 読み易くなっているのか読み辛くなっているのか、ちょっと実験。 ※1 ブーゲンビリアはレーザーサイトを持っているが、ここでは不意打ちの為に使用していない。 測量と照星のみで1キロもの彼方に存在する神姫の腕(正確には手にした爆薬)を打ち抜いた。 因みに人間と比して1/10サイズの神姫にとっては10キロに相当する。 実際の(人間の)狙撃では、2キロ先に当てられれば奇跡といって言い。 ※2 目隠ししているマヤア(アホ)は背面装備の欠損を目で見ていた訳ではない。 ダメージを受けた為(岩から落ちた)、自己診断機能が機能しその結果、レールガンのエラーを検知。 それがマヤア自身に伝えられた結果レールガンの破損に気付いた。 いくらマヤアがおバカでも、神姫としての機能は最上級のスペックである。 ※3 ここでブーゲンビリアが使ったのは、出力が低く完全に無害な只のレーザーサイト。 主砲である『ユピテル』とは完全に同軸であり、この状態でトリガーを引けばポイントされている目標へレーザーが照射される。 赤外線レーザーは低出力の内は完全に無害。 要するにカロッテP12とかに付いているアレ。 ※4 実際にはカトレアは、バリアの下の装甲もかなりの物である為、撃破には到らなかったと思われる。 デルタの推測は通常のジュビジーの2割り増しで計算されたものだが、カトレアはそれ以上の装甲を持つと言う事。 この時点ではデルタはまだ、京子と四姉妹を過小評価している。 ※5 デルタ1の始末と、村上衛の無力化の事。 当然ながら、カトレアを始めとする四姉妹にデルタの固体識別は出来ていない。 この時点ではカトレアもブーゲンビリアも、デルタ1も自爆を切り札にすると思っている。 実はデルタ2、3を失った時点で、デルタは四姉妹相手の戦力としては無力化されている。 ※6 攻撃力=戦闘力では無い。 因みにここで言う戦闘力の根拠は、普通の神姫と戦う場合、彼女が最も戦果が高いという結果に基づく。 ※7 指切り点射。実在の技術。 フルオートは引き金を引いている間、自動的に弾丸を連射するモード。 指切り点射とは、その状態で短くトリガーを引き、数初だけ弾を出す発射方法。 一回トリガーを引くことで3、ないしは5発の弾を発射するバーストモードとは違い、ある程度の技術が必要だが、慣れればセレクター(モード選択スイッチ)にない発射数を自在に撃つ事が出来る。 ※8 戦闘モードに入ると、マヤアは世界が遅くなったように認識する。 自分の動きが加速される訳ではないが、ムダが皆無になる為その動きは非情に素早い。 因みにこの状態を分かりやすく説明するなら『シューティングゲームでのタイムボタン連射』と同義。 ゲーム内の自機の速度が変化する訳ではないが、プレイヤーの体感時間は大幅に延長される為、認識力が拡大したのと同じ結果になる。 ※9 アルストロメリアが使用している銃、PDW9は高速弾を使用している。 アーマードコアとかやり込んだ人なら、『弾速が倍になる銃弾』と言ったら強力な武器だと分かるはず。 気がつけば、実に一月以上放置していた本編更新(爆)。 原因はね、ルーンファクトリー2なんだ。 あのゲームさぁ、ゲーム内で時間を進める方法が実時間の経過しかないからプレイ時間がかさむかさむ(笑)。 朝起きてから、まずモンスターの世話。ブラッシングして友好度を上げておく。 その後島に行き、パイナップルに水やって、岩割って鉱石採掘して9時になったら学校へ。 (パイナップルは収穫できたら収穫しちゃう。学校でタネに加工して売ると大金がっぽり♪) 授業を受けつつ、棚でアイテム整理して、剣やアクセサリー等、作れる物があるなら作る。 終わったら、残りのダンジョンから一つぐらいを作物の水やりと鉱石採取。 12時になったら学校に戻り、午後の授業、給食受領、アイテム整理を行って。 必要な物があればこのタイミングでお買い物。第2部は3時以降、雑貨屋で買い物できなくなるので大変。 後、不要な物の売却。昼のモンスターのドロップアイテムとプラチナ(必要になったら買える)は不必要なので売却。 そして3時までにもう一つぐらいダンジョンの作物の世話と鉱石採取。 3時になったらお風呂屋でリフレッシュ。 あとは6時までに最後のダンジョンで作物+鉱石。 6時以降は夜の出現モンスターが変わるので、アイテム作成に必要なドロップアイテムを狙って延々とバトル。 気に入ったものが居たら捕獲して育てる。 12時前にエスケープ2連射で家に帰りセーブしてから就寝。 翌日が嵐だったらリセットして外で寝袋。 これで大体30分。 1時間で二日しか進まないし、アイテムの作成や整理をやっていると1時間で1日なんて時も……。 一月30日で今大体5ヶ月間プレイ。 既に80時間ぐらい使っている計算に……。 ルーンファクトリー2恐るべし。 以上、挨拶でした(↑長っ)。 いや、本当の理由は前にもやった『乱戦描写が苦手』と言うALCの弱点故なんですが……。 うん、気分転換が80時間になっているのは本当なんだけど、AHAHAHAHA。 ――と言う訳で現状の整理。 セタ坊:敗退―アルストロメリア相手に手も足も出ず。 デルタ:敗退―カトレア&ブーゲンビリア相手に頑張ったけど、もう無理。 ストレリチア:上空待機。 果たして本当に出番はあるのでしょうか? マヤア VS アルストロメリア アルストロメリアだから勝負になっていると考えよう。 ぶっちゃけ、マヤア以外なら一人でアイゼンたち全滅させかねないし、コイツ。 レライナ VS ブーゲンビリア 『神速の騎士』対『光速のレーザー砲』 意外と好カードかもしれない。 アイゼン VS カトレア 今までの相手(フェータとレライナ)が相手だけに、砲撃戦型神姫のイメージが強いのですが、実はアイゼンは格闘の方が好きです。 ようやくマトモに殴り合いをするアイゼンさんが書けますよぉ。 ってな感じで展開しようかと。 この夜の森編が終わればようやく京子さんの過去話に入れます。 過去編からは複線回収に入るので執筆は早いはず。 多分、きっと。 後は残業と休日出勤が無い事を、って、……無い訳ゃ無いな(笑)。 ……せめて少ない事を祈るだけです……(切実)。 以上。 アルストロメリアのカタカナ語。 その後の文章がパソコンの変換機能だと、カタカナ混じりになるのでえらい面倒。 な、ALCでした。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2022.html
用語解説集 東都大学 優一達が通う国立大学法人。全国でもトップクラスの偏差値と倍率、人気があり、それに比例して学生全体の人数と学力は高め。 神姫同好会をはじめ、様々なサークルがある。 余談だが、ノーベル賞候補者を輩出したこともあったとかないとか。 治安局 この作品での警察機構にあたる。世界各国に支部があり、本部はスイスのジュネーブにある。正式名称はI.N.S.P(国際治安維持警察)なのだが、各国ではもっぱら「治安局」の通称で通っている。 MMS国際条約 国連で採択されたMMSに関する国際条約。武装神姫等のMMSの法律を作るためにはこの条約に基づいて起草することが決められている。しかし、これを含めて法の目をかいくぐり、軍用MMSや後述のCACが密輸などによって各国の犯罪組織やテロリストへの流出が近年社会問題化している。 CAC 正式名称・Codes of Atack Core(攻撃指令核)。主として軍用MMSに搭載され、競技用の神姫で言うところのCSCに相当する。 性能は競技用に使うことを前提とされたCSCの比ではなく、特に反応速度は非常に高いものとなっている。一応競技用の神姫にも搭載可能だが、競技バトルに出す際は厳重にリミッターを設けなければならない。MMS国際条約に基づき、輸出入は厳しく制限されている。 また、かつては各国で主力の座に有り続けたアムドライバーだが、戦闘力も優秀で、有る程度融通の利く神姫にその座を譲っている。 クリスタル・エレクトロニクス社 ロンドンに本社がある総合商社。元々産業ロボットなどの開発を行っていたが、武装神姫をはじめとするMMS市場の拡大にいち早く目を付けた企業の一つ。汎用高速度型フライトユニット「フロートシステム」を開発し、それまでデフォルトではアーンヴァルなど限られた神姫しか踏み入ることができなかった空中戦がどの神姫でも可能となり、バトルロンドの世界に革命を起こした。 その一方で軍需産業にも手を染めており、軍用武装神姫・可変戦闘機型イフリートや、MVシリーズを作り上げたのもこの企業である。 館山技研(たてやまぎけん) 日本の誇る大企業の一つで、正式名称は「館山技術研究所」。当初からMMSの開発に関わってきた。 「神姫にとって最も大切なのは動き回ること」をテーマにCE社と全く対を成す高機動性フライトユニット「飛翔滑走翼」の他、「制御動作式衝角刀」通称・「制動刀」や「廻転刃刀」等も開発している。 大東亜共和国 日本が盟主をつとめる複合国家。範囲は日本列島と朝鮮半島、台湾と東南アジアの一部まで。世界でも随一の経済大国で、「大東亜の不景気は世界の不景気だ」と言われるほど。 常備軍は存在せず、代わりに私設武装組織・黒の戦士団がそれを請け負う形となる。主力MMSは中量級全領域汎用戦闘騎型神姫の斑鳩(いかるが)。 ユニオン 正式名称・国際経済連合。かつての超大国アメリカ合衆国をはじめとする北南ラテンアメリカ諸国家とオセアニア諸国が加盟している。一応議会での合議制の上で大本の政策が決められているが、実質アメリカの独裁状態になっているため、足並みは決して揃っているとは言えない。 主力MMSは重量級戦闘爆撃機型神姫のメビウス。 合衆国中華 第二の大国、中華人民共和国を中心とする国家連合。範囲は中国とインド、東南アジアの大部分。MMS等の技術分野においては各国に一歩後れを取っているが、大量生産によってそれを補っている。 主力MMSは戦闘装甲騎型神姫のバイロン。 AEU 正式名称・Advanced European Union(新ヨーロッパ連合)。ヨーロッパ全ての国とエジプト、チュニジアといった北アフリカ諸国が加盟する国家共同体。 明確な国家元首は存在せず、加盟国の代表による会議で政治が行われているがユニオンと同様、足並みは揃っているとは言えない。 主力MMSである可変戦闘騎型(戦闘「機」では無い)神姫のシュベールトは配備が始まったばかりの最新鋭機なので、現在でもロートル機種である可変戦闘機型アムドライバーのアイゼン・ケンプが主力として運用されている。 ムスリム公国 中南アフリカや中東諸国が融合する形で誕生した国家。国民や政治家のほとんどが保守的なイスラーム教徒であること、公国制が採用されていることが背景にあるためか、世界では「時代遅れの国」と呼ばれているが軍事力、経済力ともに高い水準に有る。 主力MMSはホバータンク型神姫のオシリス。 ネオ・ソビエト ロシアを母体とする国家連合。他にグルジアやチェチェン、モンゴル等も一応加盟しているが状況はユニオンと似たようなもの。かつてのソ連の名を継承しているだけにやたらと秘密が多いが、観光名所も同じくらい多い。 主力MMSは寒冷地での戦闘を得意とする戦闘騎型神姫のサプサン。 カタロン 国境を越えて活動する巨大企業で、様々な事業を行っているが、本来は軍需産業においては右に出る企業は無いとされるPMC(民間軍事会社)で、シュベールトやアイゼン・ケンプを開発した。 しかしその裏では世界中のテロ組織に資金や兵器を横流しするだけでなく、自らも国際テログループとして暗躍し、政財界に大きな発言力を持つ。また、独自のMMSとして蜘蛛型のアリアドネを開発・製造している。 血塗られた聖夜事件(ブラッディ・クリスマス) この物語の5年ほど前、バトルロンドがまだリアルバトルのみだったころ、あるバトルロワイアルの大会で一体を残して参加した神姫とそのオーナー達が全員惨殺された事件。厳重な報道管制により、普通のテロ事件と発表されたが、その犯人は神姫だった。その犯人がソフィアである。 名前は現場の彼方此方が血痕で真っ赤に染められていたことに由来する。 ゼロ・スタンピーダー 正式名称・零距離相転移拡散粒子砲(ぜろきょりそうてんいかくさんりゅうしほう)。 ツヴァイのサブアームに装備されている特殊装備。 相転移粒子を利用して攻撃するが、拡散性が非常に強く、ショットガンのようには疎か、ビームサーベルにすら成らない程のため、相手を直接掴んだ状態で使用する。 威力は射程の短さに比例してかなりのモノのため、どんなに厚い装甲目標でも確実に撃破可能。 スキル バーチャルバトルにおいて使用可能な、神姫が持つ固有の特殊能力。 主な効果としては「攻撃力強化」等だが、中には完全オリジナルのスキルを神姫に身につけさせる強者もいる。 余談だが、ツガルなどのバトルモードも広義的に見ればスキルの一つである。 電脳空間偵察カメラ 通称「サイファー」。主としてバーチャルバトルでの実況中継に使用されるが、中にはハッキングの際に神姫と共に飛ばし、適切な指示をするための目として使用される場合もある。 反応弾 競技用、軍事用を問わず、神姫が装備する実弾武装の中では最も強力な武装。 熱源や赤外線、電磁波などに反応して誘導され、着弾時に強力な爆風を巻き起こす。 威力は競技用でもLC3レーザーライフルに匹敵し、対大型・装甲目標用に適している。特にペイロードの大きいメビウスやバイロンは大量に装備しての絨毯爆撃などで多大な戦果を上げた。 しかし、あまりにも強力すぎるために対人用としても使われたため、人道的観念により、たった一発でも使用には自分が所属する政府機関の許可が必要。 とっぷへ